ITIL 徒然草

シラバス


第154話で出てくるシラバスという言葉はITIL用語というわけではありません。 あまり聞きなれない言葉ですが、「大まかな学習計画」とか「講義の概要」という意味があります。 これは通常、講義を開催する側が作成する文書で、講義の中で何を教えるかを明らかにするものです。 ITIL の公的認定機関であるAPM Group(APMG)は、ITIL教育の品質を確保するために、 それぞれの認定資格取得コースに対して、このシラバスを作成しています。

ITILの公式な教育組織(ATO:Accredited Training Organizations) は、 このシラバスを見て教育コースのカリキュラムを作ります。また、 ITIL の公式な試験機関 (Examination Institutes) は、 このシラバスで記されたITILの概念に関して、同時に示されている思考能力が備わっているかを確認します。

つまり、このシラバスは資格取得を目指している候補者にとって、学習の目安になります。 ITILのそれぞれの資格を取得するために、何をどの程度、理解している必要があるが分かるようになっているのです。

例えば、ITILのファンデーションのシラバスには、 資格を取得するために求められている思考能力はブルームの目標分類学の「理解」レベルと明記されています。 ですから、このシラバスにリストされているITIL用語を理解して説明できることが、 合否を判断する基準になるのです。

このように、資格試験の出題範囲と難易度が公開されていることは、 受験生だけでなく、教育機関や試験機関にとっても公平な競争を行うための基盤を提供してくれます。 勝ち負けは別として、弊社のような小さな規模の会社でも、大手教育機関と同じ土俵で教育コンテンツの開発競争に参加できるのです。

ここで、日本のIT資格試験はどうなのかと気になり、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)のホームページをアクセスしてみました。 自分にとっては意外でしたが、多くのIT資格試験のシラバスが作成され公開されています。

どうも、ITの教育基盤を整備する組込みスキル標準(ETSS:Embedded Technology Skill Standards) を作成する過程で、 日本のIT資格試験におけるシラバスの公開が進められたようです。 (IPAが2007年に作成した教育研修基準 Version1.1

次回は、2012/10/25の予定です。

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