ITIL 徒然草

デミング・サイクル


 品質管理の父と言われているエドワード・デミング博士は、日本の製造業に多大なる 影響を与え、先進工業国としての基盤を作りました。日本科学技術連盟がデミング博士 を招聘し、1950年に初めて実施した8日間の講演には、企業の役員を含む200人 以上の日本人技術者が参加したそうです。

デミング博士は、品質管理に関する数々の教訓を残しましたが、人類に最も影響を 与えた英知の一つであるデミング・サイクルも提唱しました。デミング・サイクルと は、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)の4つの活動を継続的に 実施することで、製品や業務活動の品質を維持・向上させていくという考え方です。

この考え方はPDCAサイクルとも呼ばれ、ISO 9000(品質改善)やISO 14000(環境改善) などの管理システムに、理論上の基盤として組み込まれています。製造業を中心とした 日本の経営者は、工場の製造工程を継続的に改善することで、製品の品質を徐々に高めて いったのです。

ITILの書物群の底流に流れている考え方は、反復可能なプロセスの継続的な改善に より、ITサービスの品質を維持・向上させるというものです。つまり、工場の製造 プロセスに組み込まれたデミング・サイクルを、ITの管理プロセスにも適用すべきで あると主張しているのです。

運用業務をプロセスの集合として捕らえ、その成果物であるサービスの品質を継続的 に改善していく、それがITILなのです。このプロセス指向のアプローチは、 我々に大きな利益をもたらしました。

その利益については、第3話でお話したいと思います。

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