ITIL 徒然草

共通の概念


  ITIL は1990年代に入って欧州を中心に普及したとはいえ、まだまだローカルな存在で した。世界的な広がりを見せ始めたのは、2000年になって「サービスサポート」が 出版されてからです。

1980年代後半から出版されたITILの書籍群は、1990年代に入って40冊を超えるよ うになりました。似通った内容も目立ち、体系化されていた訳でもありませんでした。 1998年、それまでの書籍の内容を整理し、一貫性のあるプロセス・モデルに基づいた 数冊の本に統合するプロジェクトがスタートしました。

2004年には「ビジネスの観点」が出版され、ITILの第2世代が完成しました。当初から 現在の7冊の本の出版が予定されていたかどうかはわかりませんが、結果として ITサービスマネジメントにおけるベスト・プラクティスを包括的に説明する 一連の書籍群ができあがったのです。

特にその中核に位置付けられる「サービス・サポート」と「サービス・デリバリ」は、 ITサービスマネジメントの「バイブル」として数多くの読者に受け入れられました。 そしてそのことが、ITの世界に新たな価値を与えたのです。

バベルの塔の建設を知った神は、人間の高慢さを戒めるため、言葉を乱してお互いに 意志が通じ合わないようにしたと旧約聖書の創世記には記されています。ITILは、この行為と 全く逆のことを行ったと言えます。 ITIL が提供した概念や用語によって、我々はより速やかに、そしてより正確に コミュニケーションを図ることができるようになったのです。

すなわち、 異なる文化や歴史を持った世界中の ITに関係する人々が、共通の概念に基づいた議論を展開できる場を提供してくれた のです。

そしてその波は、日本にもやってきました。 ITILの日本語訳書籍の出版には大変なご苦労があったと聞いています。それでも、 itSMF Japan が中心となって翻訳、出版してくださったことで、日本のIT業界 にもITILの価値に目を向ける人が徐々に増えてきました。

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