ITIL 徒然草

ITIL V3 の特徴【サービスマネジメントのコンセプト】


ITIL V3 は、2005年末頃からスタートしたITIL リフレッシュ・プロジェクトという名の プロジェクトによって生み出されてきました。2006年の秋に配布された最初の 「ITIL Refresh News」には、V2 とV3 のコンセプトの違いが次のように表現 されています。

V2 V3
事業とITを整合させる 事業とITを統合する
バリュー・チェーンの管理 バリュー・ネットワークの創造
静的なサービス・カタログ 動的なサービス・ポートフォリオ
統合されたプロセスの集合 包括的なサービスマネジメント・ライフサイクル


「整合」から「統合」へ

事業とITのギャップを埋め、両者を整合させることがV2の テーマでした。V3 ではこの連携をさらに強め、事業戦略とIT戦略を統合することで、 両者にはさらなる利益がもたらされると主張しています。 事業とITの統合は、サービスをすばやく設計したり、投資効果を 予測したりすることを可能にしてくれます。

「バリュー・チェーン」から「バリュー・ネットワーク」へ

製造業で発達した線形モデルの経済は、強固なバリュー・チェーンによって競争上の優位を 保つ努力をしてきました。V2 では事業が確立したバリュー・チェーンの価値をいかに高めるかに 焦点が向けられていました。

しかし、今日ではパートナーとの価値交換を網目のように発達させる ことで、動的に変化する事業のニーズに柔軟に対応することが可能になりました。 V3 ではチェーンに沿った一定の活動ではなく、複数組織の複雑で動的なやり取りから 価値を生み出すシステムを創造する能力の開発に取り組みます。 これによって技術革新がもたらす新たなサービスや製品を、目的に応じて 柔軟に利用できるようになります。

「サービス・カタログ」から「サービス・ポートフォリオ」へ

V2 はどのサービスをどのレベルで提供するかという静的な情報(サービス・カタログ)がサービスマネジメントの 出発点でした。V3では、プロバイダが保有するサービス供給能力とリソースの配備がもたらす 事業価値(サービス・ポートフォリオ)の 観点からサービスを管理します。 サービス価値の測定や説明方法を確立してサービス・ポートフォリオを動的に管理することで、 サービスマネジメントの意思決定を支援します。

「プロセス」から「ライフサイクル」へ

V2 ではサービスマネジメント・プロセスとその相互関係を理解することで、プロセス改善による サービス品質の改善を図りました。V3では、プロセス・ベースのコントロールに加え、 ライフサイクルとその相互関係の理解による、ライフサイクル・ベースのコントロールを 説明しています。これは、どちらかのコントロールを選択するということではありません。 一般に、プロセス・オーナはプロセス・ベースのコントロールを採用しますが、サービス・オーナ はライフサイクル・ベースのコントロールを採用した方がうまくいくと考えられています。 複数の観点を組み合わせることで、役割や状況に応じた柔軟なコントロールが可能になります。

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