ITIL 徒然草

ITIL V3 の特徴【サービスマネジメントの構造】


関連性のない情報を体系化するためには構造によるアプローチが必要です。 構造がなければ経験から学ぶにも限界があり、過去をもって将来に備えることは 困難です。(「サービスストラテジ」 P24)

V2 において改善の原動力となった構造は、サービスマネジメント・プロセスの 相互関係です。我々はITILのプロセス定義に基づいて、経験から学んだ 多くのことをそれぞれの組織の中で体系化してきました。

サービスデスクが単一窓口となってユーザを支援するサービスサポート・ プロセス群の構造や、サービスレベル管理が中心となって顧客が求める サービスを供給するサービスデリバリ・プロセス群の構造は、今日、 我々がサービスマネジメントを実践し、成熟させるための基準となっています。

V3 では、新たなサービスマネジメントの構造として、ライフサイクルからのアプローチが 提唱されました。これは、ライフサイクルの各段階における個別のサービスマネジメント ではなく、ライフサイクル全体を通したサービスマネジメントです。

サービスの品質を企画、設計、開発、運用という各段階でコントロールするだけではなく、 各段階における入出力や相互関係に注目し、サービス・ライフサイクル全体でサービスの 品質をコントロールする取り組みです。

これは、従来からアプリケーション開発においてなされていたやり方であり、 全く真新しい概念ではありませんが、 サービスのライフサイクルの観点からサービスマネジメントを体系化し、 その構造に基づいて新たなベストプラクティスを生み出していこうというのが V3 のアプローチなのです。

V2 では、プロセスをコントロールする説明責任者としてプロセス・オーナや プロセス・マネージャという役割に注目が集まりました。 V3 では、サービス・オーナという役割が紹介されています。 サービス・オーナはサービスのライフサイクルを通して、担当するサービスの説明責任を果たします。

サービス・オーナにとって、各ライフサイクルにおけるプロセス間の相互関係は複雑であり、 サービスの品質をコントロールするために利用するには不向きです。どちらかと言えば、各ライフサイクル の入出力にフォーカスを当て、ライフサイクル単位で管理した方がより容易に コントロールすることができます

ライン単位で管理されていたサービスの品質に、プロセス単位のコントロールを加え、 さらにライフサイクル単位のコントロールを追加することでより広範囲に渡る サービスマネジメントが実現するのです。

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