ITIL 徒然草

ITIL V3 の特徴【戦略的サービスマネージメント】


V3 において、戦略的サービスマネジメントという言葉がところどころに見受けられます。 戦略的なサービスマネジメントとは何を意味するのでしょうか。

床屋やタクシーなどのサービスを思い浮かべればわかるように、顧客を満足させようと 相手の期待通りにふるまうことがサービスマネジメントの原点です。ITの世界では 通常サービスデスクなど、ユーザとの窓口からサービスマネジメントは生まれてきます。

サービスデスクが受け取るサービス要求やインシデントに対するサポート要求は、 日常における運用レベルの期待であり、いわば運用レベルのサービスマネジメント がなされています。

ITILは顧客の期待するサービス品質を理解して、そのサービスレベルを達成することで 顧客満足度の向上を図るべきであると提唱してきました。顧客にとって サービスレベルは投資を伴う戦術レベルの要求であり、その要求に応える活動は 戦術的なサービスマネジメントとみなすことができます。

サービスマネジメントは組織の中で時間とともに成熟します。個々のサービスの サービスレベルに注目して顧客の満足を得るアプローチは、サービスマネジメントの ベストプラクティスとして世界規模で展開され普及しました。しかし、競争相手より 優れたサービスマネジメントを実践するためには、次のステージに進む必要があります。

競争相手を凌ぐために戦略レベルでプロバイダが行えることは、サービス供給に必要な サービス資産の最適化を図ることです。これは、全く新たなことを始めること ではありません。日本では4月に多くの会社が組織変更を行います。 組織変更の理由は多種多様ですが、もし、その組織が 市場の変化や顧客のニーズに合わせて、人や投資の割り当てを 調整したのであれば、それこそがV3 が提唱する戦略的サービスマネジメント と言えます。

ディズニー・ランドは開園から25年を経てもまだ人々の心をとらえています。それは、 25年間何も変わらなかったことを意味するものではありません。アトラクションの追加や 変更によってサービスとそのサービスを供給する仕組みを改善してきました。

子供向けのアトラクション市場が飽和状態であるとみなせば、ディズニーシーという 新たなコンセプトの遊園地を提供し、若者向けの遊園地として新たな市場を 生み出しました。 ディズニー・ランドは、来園者の数や人の流れを観察し、 サービス・ポートフォリオを変化させています。

サービス・ポートフォリオ管理とはサービスを供給している組織が サービス戦略に基づいてサービス資産の最適化を図ることです。 サービス資産の最適化は必ずしも経営陣が行うとは限りません。 複数のサービスを提供している組織では、それらのサービスを供給する ためにサービス資産を割り当てる責任者がいます。その責任者こそが 戦略的サービスマネジメントに取り組むべき適任者なのです。

教育サービスを提供している組織であれば、教育部門だけの判断でどのカテゴリの 教育コースを充実させ、どんな設備を設置するかを計画します。 運用保守サービスを供給している組織であればどのようなサービス・メニューを提供し、 サービス資産をどのように整備するかを検討します。

サービス供給に必要なサービス資産を調整できるすべての組織が、 戦略的サービスマネジメントを実践することができるのです。

次回は、2009/4/10 の予定です。

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