ITIL 徒然草

サービスレベル管理


品質管理の世界には次のような原理があります。

「測定できなければ、管理はできない」

サービスには形がなく、ユーザが経験して初めてその良し悪しを感じるものですから、 「おもてなし」という概念はあっても、サービスの品質管理が理論的に説明されることは ありませんでした。この領域に一石を投じたのが、「サービスを測定し、その品質を管理する」 というITILが示したサービスレベル管理の概念です。

事業とプロバイダが合意した指標でサービスを測定し、その分析結果を フィードバックすることでサービスの品質を向上させるというのがサービスレベル管理 の目標です。サービスを供給と消費の両側から監視することで、 事業にとっての優先度を、サービスを供給したりユーザを支援したりする際の 判断基準に反映させることができます。

測定の対象は、事業の目標達成や顧客の満足と深い相関関係を持つ サービスの指標です。その代表的指標がサービスの可用性です。

サービスの可用性は、事業側の生産性と顧客の満足に大きな影響を 与えます。例えば、電車が時間通りに来なかったり、高速道路が混んでいて 目的地に着くのに一般道路をより時間がかかったりすれば、 利用者の生産性は当然下がります。ユーザにとってみれば、 利用できるはずの条件の下でサービスが使えない時ほど 腹立たしいことはありません。

サービスの応答性も事業目標や顧客満足と深い関係のある指標です。 エンドツーエンドの応答時間の測定は技術的に難しい面があります。しかし、 受け入れ難い応答時間はサービスを利用しなくなるなど、深刻な問題に発展する 可能性がありますので、ユーザの協力やサンプリング・ツールの利用など、 何らかの方法で測定することが推奨されています。

顧客満足度は最も重要で直接的な指標です。顧客との定例ミーティングや アンケートなどから得られる事業の観点からのフィードバックは、サービスを改善する ために最も重視されるべき評価指標になります。

サービスレベル管理はサービスの品質を測定するだけでなく、その結果を基に サービスの改善活動を主導し、サービス品質の維持向上に努めます。 事業とプロバイダが合意したサービス目標を達成するために努力することで、 サービスは事業が望むものへと進化し、双方に利益をもたらします。

次回は、2010/06/10 の予定です。

第98話 第100話