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PMBOKとの相違点(4)


今回は、プロジェクトをコントロールする文書の観点から、 PMBOKPRINCE2の相違点について考えていきたいと思います。

最初に、PMBOKの観点から説明すると、 プロジェクトの出発点は、プロジェクト憲章です。 この文書には、プロジェクトの目的やスコープ、そして、 スケジュールやコストなど、 プロジェクトを定義するうえで不可欠な要素すべての概略が示されています。 この文書がプロジェクトのスポンサーによって承認されることで、 プロジェクトはスタートします。

次に、PRINCE2の観点で説明すると、 PMBOKプロジェクト憲章にあたる文書がプロジェクト要約書です。 この文書は、概略のビジネスケースプロジェクト成果物記述書プロジェクトマネジメント・チーム構造ロール記述書などで構成されており、 PMBOKと同様、重要な利害関係者に承認されることで、プロジェクトはスタートします。
PMBOKPRINCE2
プロジェクト憲章 プロジェクト要約書
(概略のビジネスケース)
(プロジェクト成果物記述書)
(プロジェクトマネジメント・チーム構造)
(ロール記述書)

プロジェクトの立ち上げ期間中には、プロジェクトをコントロールするための文書が整備されます。 PMBOKでは、この文書群を総称してプロジェクトマネジメント計画書と呼んでいます。 一方、PRINCE2にはプロジェクト立ち上げ文書(PID:Project Initiation Document) と呼ばれる文書があります。 この文書もプロジェクトの全期間を通じてプロジェクトをコントロールするための文書の集合体なので、 ほとんど同じ概念であると考えることができます。
PMBOKPRINCE2
プロジェクトマネジメント計画書プロジェクト立ち上げ文書

それではさらに、プロジェクトマネジメント計画書プロジェクト立ち上げ文書を構成する文書群に注目してみましょう。 まずは、日本語訳は異なるものの英語表現は同じ文書として、次を挙げることができます。
PMBOKPRINCE2
リスク・マネジメント計画書リスク管理戦略
品質マネジメント計画書品質管理戦略
コンフィグレーション・マネジメント計画書構成管理戦略
コミュニケーション・マネジメント計画書コミュニケーション管理戦略

厳密には、PMBOKでは「計画書(Plan)」、 PRINCE2では「戦略(Strategy)」という異なる言葉が使われていますが、 それぞれの領域におけるプロジェクト・チームの方針が記されているという意味では、 同等の文書と考えることができます。

話は変わりますが、PMBOKではそれぞれの知識エリアごとに説明されている プロジェクトマネジメント計画書とは異なり、 PRINCE2ではプロジェクト計画書段階計画書チーム計画書と呼ばれる3つのレベルの計画書の中に、 それぞれの領域における方針が記されています。 PRINCE2では、 プロジェクトのパフォーマンスに影響を与える要素が6つある考えていて、 その6つの要素であるコスト時間(スケジュール)品質スコープリスクベネフィットの計画は、 上述した3つの計画書に記述することになります。

このような考え方に基づいてPRINCE2の3つのレベルの計画書によってカバーされている、 PMBOKプロジェクトマネジメント計画書として、 次を挙げることができます。
PMBOKPRINCE2
コスト・ベースライン
コスト・マネジメント計画書
プロジェクト計画書(コスト)
段階計画書(コスト)
チーム計画書(コスト)
スケジュール・ベースライン
スケジュール・マネジメント計画書
プロジェクト計画書(時間)
段階計画書(時間)
チーム計画書(時間)
スコープ・ベースライン
スコープ・マネジメント計画書
プロジェクト計画書(スコープ)
段階計画書(スコープ)
チーム計画書(スコープ)

また、「変更」に関しては、 PRINCE2はプロジェクト管理における1つの重要なテーマとして、 その処理に関する基本的な考え方を示しており、 PMBOK変更マネジメント計画書に記されるべき変更の取扱いに関しては、 PRINCE2変更の章に示されています。
PMBOKPRINCE2
変更マネジメント計画書変更(テーマ)

このように対応付けて行くと、 次に示すPMBOKプロジェクトマネジメント計画書に記述されるべき内容が、 PRINCE2ではあまり説明されていないことに気づかされます。 ただ、PRINCE2がこれらの領域に全く無関心というわけではなく、 下表のようにPRINCE2のそれぞれの文書に含まれていると考えることもできます。
PMBOKPRINCE2
人的資源マネジメント計画書(3つのレベルの計画書)
調達マネジメント計画書(3つのレベルの計画書)
ステークホルダー・マネジメント計画書(コミュニケーション管理戦略)
プロセス改善計画書(品質管理戦略)

一方、PRINCE2が注目しているのは、そのプロジェクトが組織に利益をもたらすか否かです。 その意味で、プロジェクトがもたらすベネフィットに関する記述の割合は、 PMBOKよりも高めです。
PMBOKPRINCE2
(プロジェクト憲章)ベネフィット・レビュー計画書
プロジェクト計画書(ベネフィット)

このように、プロジェクトをコントロールする文書に注目して2つのプロジェクト管理手法を比較してみると、 それぞれの関心事が何かがわかるような気がします。

次回は、2015/6/10の予定です。

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