第4話 デジタルマーケティング(2021/3/7)
デジタルマーケティングは、デジタル技術を利用したマーケティング活動です。
ただ、前話にお伝えようにマーケティングは企業と市場を結びつける活動なので、
デジタル技術の適用もさまざまな場面が考えられます。
マーケティングの第一人者であるコトラーによると、
顧客の状態はその商品の
認知から始まり、
魅力的な商品に
気づく(訴求)と積極的に
調査するようになります。
さらに顧客は、どこかの段階で決断して
行動(購入)に移し、
その商品を気に入った顧客は知人に
紹介(推奨)するようになります。
つまり、顧客の状態を
認知→訴求→調査→行動→推奨
という方向に持っていくことこそマーケティングの活動であるということです。
今までの一般的なマーケティング活動は、
テレビの宣伝や新聞や雑誌の広告などで
認知してもらい、
実在する店舗で
調査に来る顧客に
訴求し
行動を促していました。
そして、商品そのものの機能や品質が結果として
推奨につながっていました。
デジタルの世界では、
それ以外にも多くのタッチポイントを用いてこれらの状態遷移を促すことができます。
認知してもらう
まず、認知してもらうために、検索結果で上位に表示されるようにしたり、
広告そのものを検索結果の近くに表示する広告を打ちます。
いわゆる、
SEO(検索エンジン最適化)は、
デジタルマーケティングの重要な手法です。
また、
ダイレクトメールや
SNSなどのツールを用いる手もあるでしょう。
顧客に訴求(アピール)する
認知した顧客は、まず市場調査と対象となる商品の情報をアクセスします。
まず、商品のサイトを設けることは基本ですが、
そのサイトから顧客が求めている情報が正確に伝わるようしなければなりません。
サイト自体が良い印象を与えるものでなければ、
それだけで顧客の選択肢から外れてしまう可能性もあります。
例えば、若者向けのコンシューマー商品を販売する際に、
スマホから読みにくいサイトでは、顧客にアピールすることができません。
つまり、
ウェブデザインもまた、
商品によっては重要な活動になります。
インフルエンサーと呼ばれる対象顧客に信頼されている人物に商品を推奨してもらうという方法もあるでしょう。
有名人に紹介してもらう方法は、デジタル技術が生まれる前から考えられていたマーケティング技法ではありますが、
インターネットの世界に持ち込むことで、より効率的に商品を売り込むことができるようになりました。
もちろん、逆のパターンがあり、ネットにおける悪い評判が商品の売れ行きにマイナスの影響を与えることもあります。
調査に応える
調査の段階になると、将来の顧客は積極的にインターネットから情報を
入手しようとします。
購入済みの顧客の評価は行動を左右します。通販サイトには通常、
商品に対する評価が登録できるようになっており、
本当に良い商品であればネットワークを通じで多くの人にそのことが知られるようになります。
良い商品であることこそが、最良のマーケティング活動ですが、
横並びの商品群から抜きんでようとすれば、
自社の商品の評価を実際以上に高めたり、
他社の商品を貶(おとし)めたりするような活動もなされています。
昔から「さくら」という言葉がありますが、
偽レビューを請け負う企業さえあります。
知人に商品を無料で配布し、良い印象を抱いた場合に評価してもらうケースでも、
知人である時点でバイアスがかかっており、
どこまでが正当なマーケティングが活動で、
どこからが非難されるべき活動かの線引きが難しいのもまた事実です。
行動を促す
商品サイトにおける紹介記事や既に購入した顧客からのフィードバックも、
訴求や調査の段階にいる顧客に行動を促しますが、さらに踏み込んだ活動としては、
物理的拠点や通販サイトから抵抗感なく購入できるような仕組みを用意することです。
ここでも
ウェブデザインが重要な役割を果たします。
商品の分類や注文する際の操作のしやすさが商品によっては、
商品の売上げ影響を与えることもあります。
ただ、購入する商品を決めてから通販サイトにアクセスするなど、
ネット通販で一企業が個別に努力できる余地は狭まっており、
コモディティ化した商品ほどネット通販同士の争いになっています。
推奨者を増やす
顧客との関係を続けることで、
顧客に関する新たな情報を入手したり、
信頼感や安心感を高める施策をネットワーク経由で行うことで、
ロイヤルカスタマーを増やしていくことができるかもしれません。
機能や品質で商品の差別化が難しくなるなかで、
顧客エンゲージメントと呼ばれる顧客との関係を強化を図る動きは、
ますますエスカレートしていくことになるでしょう。
つまり、店舗に設置した
監視カメラや
ポイントカードなどから
顧客に関するありとあらゆる情報が収集され、
私たちのプライバシーは徐々に失われていくのです。
以上、デジタルマーケティングの現在の手法を概観してきましたが、
それぞの段階におけるマーケティング活動の目的が変わったのではなく、
手段が大きく変化しつつあることをご理解いただけたのではないでしょうか。
デジタルマーケティングの伝統的マーケティングとの最大の違いは、
広告の範囲や頻度のような資本の大きさからくる制約から解放され、
限られた資源で大きな成果が期待できるということなのかもしれません。
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