DX徒然草

第5話 エンゲージメントマーケティング(2021/3/14)


結婚指輪をエンゲージリングと呼ぶように、 エンゲージは婚約を意味する言葉として長く用いられてきました。 しかし実際には、「従事する」「保証する」「交戦する」など、 日本人にはイメージしにくい幅広い概念を表現する言葉です。 その中には「関わって理解しようとする」という意味もあり、 最近はこの意味で顧客エンゲージメントエンゲージメントマーケティング という形で盛んに使われるようになりました。

この意味を知っていれば、これらの言葉を理解することは難しいことではありません。 顧客エンゲージメントは顧客を深く理解することであり、 エンゲージメントマーケティングは、 顧客のことを深く理解することで、 商品を購入するだけでなく推奨する気持ちになるまで導こうとするアプローチです。

もともと日本にも「得意様」や「御用達」などの言葉があるように、 売り手と買い手の関係は大切にされてきました。 顧客は商品やその提供者に愛着や信頼感を感じるようになり、 継続して商品を購入し続けます。この感情がロイヤルティです。 ロイヤルティの説明には多くの言葉を重ねるよりも、 自身がお気に入りの商品に感じる魅力を思い浮かべてもらえば十分です。 なぜ横文字が使われるかと言えば、 日本語でぴったりと表現する言葉がないからでしょう。

この感情を図る指標として、昔から顧客満足度の調査がなされてきました。 ただ、顧客満足度調査の場合、商品を入手してからのフィードバックなので遅行指標であり、 将来の売上げにどのくらい貢献するかを判断することは難しいと言われています。

一方、最近では、NPS(Net Promoter Score)と呼ばれる指標が利用されるようになっています。 NPSは、その商品を知人に薦める可能性を10段階で評価してもらうもので、 顧客の感情や将来の行動を測定できると言われています。 回答に応じて「推奨者」「中立者」「批判者」という3つのタイプに顧客を分類します。 推奨者は再購入比率が高く、紹介客の多くは推奨者の紹介によって購入します。 批判者は、否定的な発信で新規顧客の購入意欲に水を差し、 従業員の労働意欲をそぐことさえあります。

NPSは顧客満足度と比較して業績との相関性が高いことが 明らかになってきており、エンゲージメントマーケティングには欠かせない指標となりました。 NPSは先行指数であり、市場からのフィードバックによってより早く進化するためにも、さらに重要度が増すことでしょう。

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