CSIアプローチの最初のステップである「ビジョンは何か?」で実施することは、 背景を理解することと、利害関係を理解することです。 利害関係を理解する活動の手助けとして、 利害関係者分析ワークシートと利害関係者分析マップと呼ばれる ツールキットが紹介されています。
これらのツールキットは、第6章組織変更管理の中で、 効果的な活動として取り上げられている利害関係者管理の中で、 その活動と共に説明されています。
【利害関係者の分析】
1.利害関係者を特定する
2.利害関係者の優先度を決める
3.主要な利害関係者を理解する
利害関係者分析ワークシートは、 利害関係者の分析における最初のステップである「利害関係者を特定する」活動で、 想定される利害関係者を洗い出す際に利用します。 表形式のワークシートの縦軸には想定される利害関係者を記入し、 横軸にはそれぞれの利害関係者との関係性と期待(自分にとっての利点)を記入します。 また、特記すべきことがあれば、見解・コメントとして補足します。
関係性についてさらに詳しく紹介すると、 改善活動がその利害関係者に与えるインパクトの大きさと、 その利害関係者が改善活動に与える影響力の大きさを分析します。 つまり、影響の度合いを双方向で考えるということです。
以下の表は、利害関係者分析ワークシートを用いて、 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に対する、 さまざまな利害関係者の立場を整理したものです。
利害 関係者 (グループまたは 個人) |
関心/関与 (その取り組みが 利害関係者に どのようなインパクトを与えるか?) |
力/影響/ インパクト (取り組みに対する) (高/中/低) |
期待 (自分にとっての 利点は?) |
見解/コメント |
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経済圏ができれば、米国もさまざまな影響を受ける |
アメリカに不利益とみなすと、関係各国に圧力をかける |
参加すれば、農産物の輸出が増え、知的財産が守られる | アメリカ第一主義 | |
利益も不利益も大きい |
各国内の承認・非承認が他国の行動に影響を与える |
参加により経済圏が大きくなる | ||
全体で見ると大きな影響は受けない |
一部の参加国に対する影響力がある |
新たな経済圏へ参入するという選択肢ができる | 隣国 | |
輸出入が減少する可能性がある |
影響力は小さい |
新たな経済圏へ参入するという選択肢ができる | 隣国 | |
価格下落により収入が減る |
影響力は小さい |
競争による酪農産業の成長と淘汰 | 産業界 | |
貿易障壁が小さくなり、売上が向上する |
影響力は小さくない |
新たな市場開拓の機会 | 産業界 | |
共同体 |
影響も関心も小さい |
影響力は小さい |
自由貿易に対する肯定的風潮が生まれる | EU |
これによって、おもな利害関係者の立場が整理できました。
次のステップでは、これらの情報に基づいて 「利害関係者の優先度を決める」ために、 利害関係者分析マップを用いて、 協定を推進する立場のグループと他の利害関係者との関係を分析します。