日本では、製品にしても、サービスにしても、 過剰品質と指摘されるケースが少なくありません。 だからと言って、手を抜いた結果、 サービスに対する悪い評判が立ってしまっては元も子もありません。 組織にとっての最適なサービスは、 どのようにして導きだすことができるでしょうか。
ITILは、サービスストラテジにおいて、次のように指摘しています。
多くのサービスプロバイダは、(中略) 可能な限り最高レベルのサービスを提供すべきであると信じる罠に陥る。 これは短期的には、より高いレベルの顧客満足につながる可能性があるが、 長続きしない(サービスストラテジ P104)
そして、高い顧客満足度が長続きしない理由として、次の2つを挙げています。
① 費用がかかるためサービス価格を上げるか、 魅力品質要素の提供を止めざるを得なくなる
② 気前の良いサービス(魅力品質要素)は、 すぐに、あると良いサービス(性能品質要素)となり、 やがて、当然のサービス(基本品質要素)になる
つまり、魅力的なサービスを提供することは、 一時的に顧客満足度を高めたとしても、 サービス供給コストにはねかえって来るし、 時間が経つとそのサービスが当然のことになってしまうため、 顧客満足度の向上に貢献しなくなってしまうということです。
このことを踏まえITILは、次の3つの状況下でのみ、魅力品質要素を提供すべきであると主張しています。
① 継続して提供するための資金を確保し、戦略的に提供する
② 期間を限定し、マーケティング活動の一環として提供する
③ 顧客を失望させた過失を償うために、特別な例外として提供する
②や③は、顧客が期間限定や例外であることを周知していることが前提となります。 ②や③のケースを除けば、魅力品質要素を提供するのは、 明確な差別化の意図があり、増加するコストに対する覚悟がある場合に限られるということになります。
競争がある以上、最適なサービスが、 永久にその地位に居続けることは不可能です。 重要なことは、変化する顧客や市場のニーズと、 サービス供給コストを正確に把握し、 顧客の満足を長期的に満たすようなサービスを定義し、構築し、 提供し続ける能力に磨きをかけることです。
わかっていてもなかなかできることではありませんが、 それが、最適なサービスを顧客に提供するための唯一の方法なのかもしれません。
次回は、2014/3/25の予定です。