Best Management Practiceというサイトをご覧なられたことがあるでしょうか。 ITILの最新情報を入手しようとインターネットをアクセスすると、 このサイトにたどりつきます。
このサイトは、英国政府の刊行物を出版するTSO (The Stationery Office) が、 英国内閣府 (Cabinet Office) やAPMGという試験機関と共同で運営しています。 TSO の生い立ちは、第12話にまとめてあるのでそちらをご覧ください。 ITIL オーナであるOGC(Office of Goverment Commerce) も含め、これらの組織の役割分担は次のようになっています。
OGC:ITサービスマネジメントのベストプラクティスを開発する
内閣府:ITILの著作権を管理する
TSO:内閣府から分離民営化された組織で、ITILを印刷・販売する
APMG:ITILなどの認定業務を一手に引き受けている民間企業
つまり、上記4つの組織がBest Management Practiceを共同で運営しているのです。 当初、存在したOGCのホームページもこのページを参照するように誘導しています。 ただ、このサイトではITILだけでなく、OGC が開発して展開している次のような他の領域のベストプラクティスも紹介しています。
PRINCE2 - プロジェクト管理
M_o_R - リスク管理
MSP - プログラム管理
MoP - ポートフォリオ管理
MoV - 価値管理(バリュー管理)
P3O - ポートフォリオ、プログラム、プロジェクト・オフィス
英国政府は、自国が開発したベストプラクティスを業界標準のフレームワークとして戦略的に普及させようとしているようです。 これは、ベストプラクティスという知的財産からのライセンス収入が得られるだけでなく、自国企業の競争力を高めることにつながるでしょう。
つまり、英国企業に最も適したベストプラクティスを自国企業がいち早く共有することで、より多くの企業が競争力のある組織を築き上げることができるからです。 さらに、そのノウハウを教育やコンサルティング・サービスとして輸出することができます。 デジタル放送、高速鉄道、電気自動車充電方式など工業製品で激化している 国家間の規格争いが、ベストプラクティスのような知的財産でも始まろうとしているのかもしれません。
二匹目のドジョウならぬ、二つ目のベストプラクティスを狙って英国政府の鼻息は荒いようです。 英国内閣府が発行したある文書には、電子的著作料(Digital Copyright Exchange) の収入を、 2020年には現在より最大年間22億ポンド(約2,700億円)押し上げると予測しています。
日本もIPA(情報処理推進機構)などが、 国家予算を使って様々な調査や研究を行っているようですが、 一部の企業の研究開発費を肩代わりしているとしか思えない小粒なテーマを扱っているように感じるのは私だけでしょうか。
今週からロンドン・オリンピックが開催されますが、OGC が開発したMSP と呼ばれるプログラム管理のベストプラクティスが採用されたとアピールしています。 もし、東京でオリンピックが開催されることになった時、 そのプログラム管理にMSPが採用されるなんてことがあるかもしれません。
次回は、2012/8/10の予定です。