ITILの読者にとっては、OGC(Office of Government Commerce)の方が馴染み深い 呼び名かも知れません。OGC を英国商務局と訳している文書もありますが、実際に OGC のホームページでその活動内容を参照すると、英国政府において公共調達に関する 総合的な政策を担っており、英国調達庁の方がより実体を正確に表して いるように思います。
この組織は2000年に、以下の部門を統合して設立されました。
※PFI(Private Finance Initiative)は、公共施設の設備投資とサービス提供を 民間資金に委ねる方法
それまで各政府組織が作成してきた公共調達に関する規則や手引きを引き継ぎ、 政府関係部署の公共調達 改革推進を支援しています。ITILもまた、CCTAで出版されOGCに引き継がれています。
ITの調達だけがOCGの責任範囲ではありませんが、CCTAがITILと同様に提唱した プロジェクト管理手法であるPRINCE2もその分野での地位を確立しており、 ITの管理手法に関する情報の発信源となっています。
さて、ITILに関わる英国政府機関には、英国印刷庁(HMSO:Her Majesty's Stationery Office)があります。Her Majesty というのは女王陛下のことですが、 このような名称が政府機関に付けられるのは、英国ならではのことでしょうか。
HMSOは1786年、政府の各省庁に文房具を供給する機関として設立され、 次第に英国政府の出版業務も行うようになりました。 英国政府の出版システムは比較的安定していましたが、近年になって政府刊行物 の形態も多様化し、1995年にHMSOの民営化計画が発表されました。
HMSOで民営化された機能の一部は、TSO(The Stationery Office)という非政府組織となり、 現在でもITILの出版に携わっています。
一方、Crown copyright(英国王室の版権)の管理業務は、HMSOの機能と して政府組織に残りました。 Crown Copyright で保護 されているITILもまた、HMSOによって管理されています。ITILの書籍に記されている 内容や図表を利用する場合、必ずHMSOの許可を得る必要 があります。しかし排他的権利ではないので、ロイヤリティも含め定められた ルールに従えば誰でも利用することができます。