ITIL 徒然草

リリースおよび展開マネージャ


今回は第140話で紹介した サービスマネジメントを主要な8つの役割の中から リリースおよび展開マネージャを取り上げてみたいと思います。

"ITIL V3 Small-Scale Implementation"には、リリースおよび展開マネージャに対して、 次のような役割を兼任させる例が紹介されています。

①構成マネージャ
②構成アナリスト
③構成アドミニストレータ
④構成管理ツール・アドミニストレータ
⑤サービス・テスト・マネージャ
⑥リリースのパッケージ化および構築マネージャ

リリースおよび展開マネージャの本来の役割は、 承認された移行計画に従い、用意された資金やリソースを使って、 新たなサービスや変更されたサービスを運用環境に展開することです。

リリースや展開の活動は、通常、さらに細かく分割され管理されますが、 小さな組織やプロジェクトでは、むしろ一人の人間が全体をコントロールした方が、 効率よく変更プロジェクトを進めることができる場合もあります。 ここに示した兼任の例は、 リリースおよび展開マネージャにハードウェアやソフトウェアの展開だけではなく、 それらの情報管理も担わせるというものです。

構成マネージャは構成管理のプロセス・マネージャであり、 構成管理の計画立案、導入と運営、継続的な改善に責任を持っています。 組織の方針に基づいて構成管理の適用範囲を設定し、 活動の監視とコントロールを行います。

構成管理の実務を担当するのは、 構成アナリスト構成アドミニストレータ構成管理ツール・アドミニストレータです。

構成アナリストは、管理すべき構成アイテムと属性を検討し、 構成情報の登録手順やコントロールなど、具体的な業務手順を定義します。 他の実務担当者と連携して、構成管理システム (CMS:Configuration Management System) を有効に活用した、構成管理プロセスを導入します。

構成アドミニストレータは、構成管理プロセスの実務における中心的存在です。 構成アイテムの情報をコントロールし、ステータスの情報を提供します。

構成管理ツール・アドミニストレータは、構成管理に関連するツールを評価して組織に最も適したツールを導入します。 ツールの稼働状況を監視して、技術面から構成管理を支援します。

サービス・テスト・マネージャは、サービストランジション・マネージャに直接報告する立場であり、 本来はリリースおよび展開マネージャと同等の立場になります。兼任する場合には、 テストの妥当性に対する評価が厳格になされるよう注意しなければなりません。

リリースのパッケージ化および構築マネージャは、 最終的なリリース構成を構築して、テストする役割を担っています。 様々なチームの協力を得ながら、リリース用パッケージを設計して構築します。

小規模な組織において、リリースおよび展開マネージャ がこれらの役割を兼務することは決して不思議なことではありませんが、 インフラストラクチャに関する豊富な知識と経験が求められることは想像に難くありません。

次回は、2012/5/10の予定です。

第144話