今回は第140話で紹介した サービスマネジメントを主要な8つの役割の中から サービストランジション・マネージャを取り上げてみたいと思います。
"ITIL V3 Small-Scale Implementation" には、小規模な組織に ITIL V3 を適用する一例として、 サービストランジションの活動を2つに分類し、 サービストランジション・マネージャとリリースおよび展開マネージャに割り当てる方法が紹介されています。
サービストランジション・マネージャは、サービス移行の最終的な説明責任者です。 サービスデザインが作成したサービスの仕様と移行計画から実施すべき活動や必要となる資金やリソースを特定し、 それらを手配することで変更を実行できる環境を調えます。
一方、変更の実行責任者であるリリースおよび展開マネージャは、 承認された移行計画に従い、用意された資金やリソースを使って、 新たなサービスや変更されたサービスを運用環境に展開します。
"ITIL V3 Small-Scale Implementation" の例では、サービストランジション・マネージャに対して、 次の2つの役割を兼任させています。
①変更マネージャ
②サービス資産マネージャ
変更マネージャは変更管理のプロセス・マネージャであり、 変更要求に素早く対応することでサービスの価値を最大化する役割を担っています。 変更が速やかに実行できるような基準と手順を作成し、 変更要求の記録、優先度付け、評価、承認、計画、テスト、実装、文書化、レビューが確実に実施されるように管理します。
サービス資産マネージャは、サービス資産 (組織、プロセス、人材、設備など、サービスを構成する組織の経営資源)の情報を管理する方針と規則を作成し、 それらの情報を管理することで、他のサービスマネジメント活動を支援します。
この2つの役割を兼任するサービストランジション・マネージャは、 サービスデザインで作成されたサービスの計画を確実に実行するために、 利害関係を調整して組織として受入可能なプロジェクト計画を作成し、 必要な資金、人材、リソースを手配することが求められています。 サービストランジション・マネージャに求められている変更を管理する能力とは、 ITの専門知識や専門スキルというよリも、利害を調整する能力やプロジェクトを管理する能力のようです。
次回は、2012/4/25の予定です。