ITIL 徒然草

技術サービス・カタログ


ここ数年、ITILの概念の普及と同時に構成管理データベース (CMDB : Configuration Management Data Base) の概念もITの世界に広まりました。 サービスの構成要素の最新情報を正確に維持することが、 組織に価値をもたらすことは誰もが考えることかも知れません。 しかしそれまでは、固定資産の情報だけを管理するとか、 ネットワーク部門内だけで情報を共有するとか、 限られた情報を限定された利害関係者だけで共有するのが一般的でした。

サービスとその構成要素に関する正しい情報はサービスマネジメントの活動を様々な形で支援し、 結果として組織に大きな価値をもたらすという今となっては当然と思われることを、 改めて我々に認識させてくれたのが ITIL でした。

この考え方をさらに発展させたのが、技術サービス・カタログです。 技術サービス・カタログは、顧客に提供されているすべてのITサービスと、 それを支える顧客には見えないITサービスやコンポーネントとの関係情報を提供するサービスの目録です。

例えば、メール・サービスがDNSサービスやインターネット接続サービス、 あるいはセキュリティ関連サービスによって支えられていて、 それらのサービスがどの組織からどのようなサービスレベルで提供されているかなどの情報を提供します。

この種の情報も今まで存在しなかった訳ではありせん。 それぞれの組織がサービスを管理するために必要な情報として保有し、維持管理してきました。 その重要性を改めて強調したのが ITIL V3 の技術サービス・カタログという概念です。

この技術サービス・カタログは、ビジネス・サービス・カタログと結びつくことによって、 サービスマネジメントはさらなる価値を提供してくれます。 例えば、メール・サービスを供給するための最小限必要となるサービスとその構成要素を特定することができます。 また、オペレーショナルレベル・アグリーメントや外部委託契約を整備するために必要な情報を提供してくれます。

サービスを供給する側のスタッフは、自身が管理している構成要素が事業にどのような貢献をしていて、 障害の際にどのようなインパクトを事業にもたらすのかをより明確に把握することができます。

ここで気になるのは、構成管理システムと技術サービス・カタログの関係です。 ITIL 2011 には次のような記述があります。

サービス資産と構成データの詳細情報を扱うのはサービス資産管理および構成管理プロセスである

技術サービス・カタログは、 ITサービスとそれを支える下位のITサービスやコンポーネントの情報を、 プロバイダ側のスタッフにより容易に提供するための手段であり、 サービス資産管理および構成管理プロセスの活動と重複しないように注意する必要があります。

従って、サービス・カタログ管理は管理する情報とその表現形式を定義するために、 サービス資産管理および構成管理プロセスやサービス・ポートフォリオ管理プロセスと調整したり、 必要な情報を精選するために事業側やプロバイダ側の利用者と十分なコミュニケーションを図ることが重要だと言えます。

次回は、2012/1/25の予定です。

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