サービスマネジメントの重要な役割の一つにサービス・オーナがあります。 前回、紹介した"ITIL V3 Small-Scale Implementation"には、 小規模組織のサービス・オーナが兼ねるべき役割の一例が示されています。
① サービス・マネージャ
② 事業関係マネージャ
③ サービスレベル・マネージャ
④ サプライヤ・マネージャ
⑤ CSIマネージャ(継続的サービス改善マネージャ)
サービス・オーナを含むこれらの役割について、ITIL V3 ではどのように説明されているのでしょうか。
サービス・オーナは、担当する特定のサービスの開始、移行、 継続的な維持管理とサポートに説明責任を持つプロバイダ側の代表者という役割です。
サービス・マネージャは、サービス・オーナが特定のサービスに対する説明責任者なのに対して、 プロバイダが供給するすべてのサービスに対する説明責任者になります。 サービス戦略の決定からサービスの維持運営まで、 プロバイダが供給するすべてのサービスに責任を持つ最も重要な役割です。
事業関係マネージャは、事業関係管理のプロセス・マネージャであり、 事業と顧客のニーズを理解することで顧客との関係を確立し、 変化する顧客のニーズを確実に把握する役割を担っています。
サービスレベル・マネージャはサービスレベル管理のプロセス・マネージャであり、 提供するサービスが事業と顧客のニーズを満たすことを確実にする役割を持っています。
サプライヤ・マネージャはサプライヤ管理のプロセス・マネージャであり、 サプライヤに課す目標が達成されることで投資からの見返りを確実にする役割を担っています。
CSIマネージャ(継続的サービス改善マネージャ)は、 組織全体に渡って改善活動の調整や支援を行う役割であり、 すべての改善活動の成功に責任を持っています。
上述の役割に求められるタスク(仕事)をまとめると次のようになります。
- 顧客との関係を確立し、事業や顧客のニーズを確実に把握する
- 顧客のニーズを満たすサービスを供給する枠組みを作る
- 合意レベルのサービスを供給し、プロバイダ側の責任者として説明責任を果たす
- ライフサイクル全体を通して、継続的にサービスを改善する
顧客が満足するサービスを確実に提供するためには、 サービス・ライフサイクル全体に責任を持つ役割が必要で、 それがサービス・オーナであり、 (複数のサービスに対して責任を持つ)サービス・マネージャなのです。
組織やサービスが大きくなり、複雑になるに従って、 サービス・オーナの役割は細分化され、専門的なものに進化していきます。 その結果、関係管理マネージャ、 サービスレベル・マネージャ、サプライヤ・マネージャ、 CSIマネージャ等の役割が生まれてきたと考えることができます。
次回は、2012/3/10の予定です。