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成果物重視の原則


今回は、PRINCE2の7つの原則の中から成果物重視(Focus on products)の原則に焦点を当てて、 PRINCE2 の特徴をお話ししたいと思います。 成果物重視の原則は、PRINCE2 が提唱する品質管理手法の原点です。 すなわち、その成果物が組織にベネフィットをもたらすことが、 プロジェクトの使命である以上、成果物は顧客の期待するものでなければならないということです。

これは、改めて主張するには及ばないほど至極当然のことで、 誰もが分かっていることですが、 それを実現することが簡単ではないこともまた事実です。 PRICE2では、この原則を貫くために次のような仕組みを提供しています。

(1)プロジェクト成果物記述書

(2)品質管理戦略

(3)成果物記述書

(4)品質基準と許容度

(1)プロジェクト成果物記述書

PMBOKのプロジェクト憲章にあたる、PRINCE2 のプロジェクト要約書には、 プロジェクト成果物記述書が含まれていなければなりません。 このプロジェクト成果物記述書には、 プロジェクトとして認められるために何を提供しなければならないかが定義されています。 それは、単なる成果物のリストではなく、成果物全体の目的と優先順位、 そして、顧客の期待品質と呼ばれる受入基準を定義します。 この文書によって、 顧客との間で合意されたプロジェクトの成果物に対する品質基準 が明確に示されることになります。

(2)品質管理戦略

PMBOK における品質マネジメント計画書と同様に、 PRINCE2 には、品質管理戦略と呼ばれる文書があります。 この文書は、PMBOKにおけるプロジェクトマネジメント計画書にあたる、 プロジェクト立ち上げ文書を構成する文書の1つで、 そのプロジェクトで採用する品質管理手法や、 要求される品質基準を満たすために実施する活動とその活動に関する責任や役割を定義します。 さらに、記録や報告の内容とそのタイミングを文書化します。
PRINCE2には、どのような品質管理手法を採用するかについての言及はありませんが、 品質管理が確実に実施されるようにプロジェクトの立ち上げ段階で、 その実行責任を明確にするのです。

(3)成果物記述書

成果物記述書は、プロジェクト成果物の開発とその後のレビューや承認を管理する文書で、 各成果物に対する品質管理手法、品質基準、品質許容度、 品質責任(製作者、レビュー担当者、承認者)を定義します。 この文書によって、品質管理戦略で示された品質管理に関するプロジェクトの方針が、 各成果物に対する具体的な要求として文書化されます。
成果物記述書は、すべての成果物に対して作成されるべきであり、 成果物の必要性が確認されたらできるだけ早く作成します。

(4)品質基準と許容度

成果物記述書 成果物重視の原則を支援するのが、例外による管理の原則です。 例外による管理は、プロジェクトに対する権限レベルに合わせて、 目標からの逸脱に対する許容度を設定し、 許容範囲を逸脱した際により大きな権限で対処する仕組みです。

権限レベルには、①コーポレートまたはプログラム管理、②プロジェクト委員会、 ③プロジェクト・マネージャ、④チーム・マネージャ の4つの段階があり、
④チームマネージャはワークパッケージに設定された許容度の範囲内で、
③プロジェクト・マネージャは段階計画書に設定された許容度の範囲内で、
②プロジェクト委員会はプロジェクト計画書に設定された許容度の範囲内で
成果物の品質を管理します。

仮に与えられた許容度の上下限を超えた場合には、 すみやかに上位の権限レベルまでエスカレートし、 より大きな権限によって例外に対応します。 この例外による管理の仕組みによって、 品質基準に対する例外に対しても すばやく対処することができます。

次回は、2015/7/10の予定です。

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