ITIL 徒然草

ITILの資格認定制度2


ITILの認定資格には、「ファンデーション」「インターミディエイト」「エキスパート」 の3段階で構成されているという話を致しましたが、 これらはブルームの目標分類学(Bloom’s taxonomy) と呼ばれる体系化された判断基準に基づいて作成されています。 アメリカの心理学者であるベンジャミン・ブルームは人の思考能力が「知識」「理解」「応用」「分析」「統合」「評価」という6つの段階に分類できると主張しました。

「知識」は情報を思い起こせるレベルで、例えば、「サービスデスク」がどんな機能か思い起こすことができます。 「理解」は意味を理解しているレベルで、例えば、「サービスデスク」がどんな機能か説明することができます。 ITILのファンデーション資格は、この「理解」レベルの思考能力が求められています。つまり、 「サービスデスク」がどんな機能であるかを知っていて説明することができれば、 ファンデーション・レベルの思考能力があるということになります。

「インターミディエイト(intermediate)」という言葉はあまり聞きなれない英語ですが、 「中級」という意味があり、ITILの資格としては初級の「ファンデーション」と、 上級の「エキスパート」の中間に挟まれた資格であることを意味しています。 「インターミディエイト」は、ITサービスマネジメントをいくつかの領域に分割して、 それぞれの領域における「応用」「分析」の能力を評価する資格になっています。

「応用」はその概念を別の状況で使うことができるレベルで、例えば、 「サービスデスク」を自分の組織に適用する計画を作成することができます。 「分析」は対象を分解して理解を深めることができるレベルで、例えば、 「サービスデスク」の良し悪しを判断したり、改善点を指摘したりすることができます。 ITILのインターミディエイト・コースは、この「応用」「分析」の能力を育成するコースで、 「インターミディエイト」の資格は、それぞれのサービスマネジメント領域において「応用」「分析」の能力を持っていることを、第3者である教育機関が証明してくれるものです。

「サービスデスク」を例にして説明すると、インターミディエイトにおける 「運用サポートと分析(OSA:Operational Support and Analysis )」の資格を持っている人は、 サービスデスクの導入に関する計画を立案したり、 課題を抽出して改善方法を提案できる能力を持っているという証明書を、 英国政府が認可している教育機関が発行してくれるのです。

さらに上級の「エキスパート」には、ITサービスマネジメントの全ての領域を「統合」する能力が求められます。 「統合」は、様々な概念を組み合わせて新たなものを生み出す能力であり、 ITILの書籍に書かれている様々な原則やベストプラクティスを組み合わせて、 ITサービスマネジメントの複雑な課題を解決する能力があることを証明する資格になります。

「エキスパート」の資格を取得するには、 ITサービスマネジメントの全領域をカバーするように複数の「インターミディエイト」資格を取得した上で、 「統合」する能力を開発あるいは証明するために「ライフサイクル全体の管理 (Managing Across the Lifecycle) 」 トレーニング・コースに受講し、資格試験に合格しなければなりません。

ITILのオーナであるOGCはさらに、ブルームの目標分類学における 「統合」「評価」の能力も持っていることを証明する 「マスター」という資格を用意すると発表していますが、この話題についてはいつか触れてみたいと思います。

次回は、2012/10/10の予定です。

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