サービスストラテジの2011年版は、2007年版と比較して約80% もページが増えましたが、 その理由として随所にきめの細かい丁寧な説明が加えられているからです。 その一つに、プロバイダと顧客が同じ組織に属するか否かによる相違点について言及していることが挙げられます。
2007年版においても次のような説明はありました。
サービスマネジメントの側面のほとんどはすべてのタイプのサービス・プロバイダに同様に当てはまるが、 顧客、契約、競争、ターゲット市場、収益、戦略などの他の要素は、 タイプによって異なる意味合いを持つ。
(サービスストラテジ 2007年版 P41)
しかし、その詳細にまで踏み込んだ議論はありませんでした。2011年版では、 同じ組織に属する顧客を内部顧客、他の組織に勤める顧客を 外部顧客と呼び、 さまざまなポイントで2つの違いに触れています。
特に財務の仕組みは、顧客が内部の場合と外部の場合では、全く別の論理が存在しますから、 実務に携わっている方にとってはより共感する内容になっているのかもしれません。 例えば、内部顧客の資金について、次のような説明がなされています。
ITサービスの資金は内部で提供されるため、ITは回収する必要のあるコストである。・・・(中略)・・・ 多くの内部ITサービス・プロバイダは、個々のITサービスのコストを定量化して外部財源に関連付けることをしていない。 これらのサービス・プロバイダでは、限られた一群のスタッフと技術に対し複数の内部顧客がサービスを要求し、 顧客は中央のIT予算割り当てによってすでにスタッフと技術に「支払い済み」であると信じている危険な状況にある。 ・・・(後略)・・・
(サービスストラテジ 2011年版 P43)
つまり、事業への貢献とサービス・コストの関連付けがないと、 事業側の一部のユーザ(例えば、特定の一部門)が、 情報システム予算を既得権と考えて、 コストを考えずにさまざまな要求を無秩序に提出する (声が大きい部門に多くの予算が配分されたり、 プロバイダのスタッフに過度な負荷がかかったりする)状況が生じると警告しています。
次回は、2013/2/25の予定です。