(Service Charter)
ITILに長年関わっている人でも、 このサービス憲章という言葉には初めて接する方が少なくないと思います。 これも 2011年版で新たに使われるようになった用語の1つです。また、 ファンデーション試験の対象にもなっていないので、 私たちが目にすることはほとんどなく、 最終的にITの世界で市民権を得ることができるか否かは定かではありません。
サービス憲章は、 サービスに関わるすべての利害関係者、 開発、テスト、展開の各スタッフに、 「何がいつまでに構築されるか」、 「コストがいくらかかるか」について共通の理解を得てもらうための文書です。 プロジェクト管理の知識をお持ちの方であれば、 プロジェクト憲章のことと受け取っていただいてよいと思います。
サービス憲章がサービスマネジメントでどのような役割を果たすかを理解するためには、 この文書が何のために、どのタイミングで作成されるかについて知る必要があります。 以下は、サービスが定義され、サービスオペレーションに展開されるまでの経過を時系列にまとめたものです。
① サービス・モデルを定義する
② 価値提案を明示して、ビジネス・ケースを作成する
③ 設計段階の資金を確保するため変更提案を提出する
④ 変更管理が変更提案の是非を判断する
⑤ 承認の場合、サービス・ポートフォリオ管理がサービス憲章を起草する
ここまでの段階で、サービスの目的、適用範囲、構築方法、展開方法、スケージュルなどが サービス憲章にまとめられます。 上級管理職がこの憲章にコミットすることで、 プロジェクトのためのリソースが確保されると同時に、 関係者の役割や責任が明確になります。 サービス憲章には、プロジェクトの最終責任者、資金調達責任者、 成果物に対する最終承認者などが明記されています。
⑥ サービスを設計し、サービスデザイン・パッケージ(SDP)を作成する
これがサービスデザインであり、プロジェクト・マネジメント・オフィス、 および、プロジェクト・マネージャはデザイン・コーディネーション の活動を通じてSDPを作成し、サービストランジションに引き渡します。
⑦ 移行と展開の詳細計画を立案して変更要求に提出する
⑧ 変更管理の承認後、コンポーネントの調達、構築、テストが実施される
⑨ リリース・テストの結果から、変更管理がリリースの最終判断を行う
⑩ サービスオペレーションにサービスが展開される
移行の計画立案およびサポート・プロセスは、 サービス憲章やSDPに含まれる上位の移行計画に沿って、 より具体的で詳細な構築、テスト、展開の計画を立案します。 これが、サービスの開発およびリリースに関するプロジェクト計画であり、 ⑦~⑩までがプロジェクトとして実施されます。
サービス憲章の具体的なイメージを持っていただけたでしょうか。 呼び方は違っていても、同等の文書が組織内で作成されている方もいらっしゃると思います。 2011年版は、前回ご紹介した「変更提案」や今回の「サービス憲章」という言葉を用いて、 プロジェクトとの関係性を明確にしようとしているように思われます。
次回は、2013/7/25の予定です。