ITIL 徒然草

運用管理ツール


サービスデスクを支援するツールと同様に、サービスマネジメントに不可欠なツールに IT運用管理を支援する運用管理ツールがあります。 運用管理ツールも技術の発展とともに機能が強化され、統合されてきました。

運用管理ツールには大きく2つのタイプがあります。一つはソフトウェアや ハードウェアを供給するベンダーが、自らの製品の運用に便宜を図るために供給しているものであり、 もう一つは運用管理そのものを目的として、あらゆるタイプのインフラストラクチャの 運用管理を支援するツールです。

自社製品を管理するツールはその製品の機能や性能を最大限に 生かすべく、きめの細かい制御が可能である傾向があります。一方、汎用的な運用管理ツールは 運用管理者がシステム全体を統合して管理できるように、一貫性のある操作環境や 表示機能を提供してくれます。

複数のツールを連携させたいというニーズは、マルチベンダー環境が普及する過程で 必然的に高まり、運用管理情報のインタフェースとしてSNMP(Simple Network Management Protocol)が 定義されました。SNMPはその後、ネットワーク上の機器を管理する標準的な方法としてその地位を確立し、 今ではほぼすべてのインフラストラクチャに組み込まれ、データベースや電子メールなどにもその守備範囲を 拡大しています。SNMPを基盤として発展してきた統合型の運用管理ツールには、一般に次のような 機能が求められています。

【統合コンソール】
サービスを提供している各システムの稼働状況や、ネットワーク、サーバ、アプリケーション などで発生するさまざまなイベントを集中して管理する機能です。 管理下に存在するインフラストラクチャからのイベント情報をリアルタイムに表示したり、 視覚的に表現したりすることで、運用管理者の負担を軽減します。

【構成管理機能】
システムの構成情報を定期的に収集し、不適切な構成を検出します。 システム構成を視覚的に表現することで、運用管理者は複雑で大規模なシステムでも その構成を正しく把握することができます。 変更によって影響を受ける範囲を特定したり、変更履歴を管理したりする等、 変更管理を支援する機能が組み込まれているツールもあります。

【ジョブ管理】
業務を遂行するために必要なバッチ処理をスケジュールし、自動的に実行します。 多くの統合型運用管理ツールは、マルチプラットフォームに展開されているバッチ処理も制御することができます。 また、クラスタシステムへの対応や実行制御の多重化など、 日常のバッチ処理業務を効率的に実施するための仕組みを用意している ツールもあります。

【リソースおよびパフォーマンス管理】
システム資源の使用状況やその結果であるパフォーマンスを監視したり、継続的に 情報を収集し分析することで、運用管理を支援する有用なナレッジを提供します。 現在では、ほとんどのツールが仮想化された環境や複数のOSやハードウェアが 混在する環境のITリソースを一元的に管理する機能を提供しています。

【ネットワーク管理】
コンピュータとルータやハブ等の通信機器がどのように接続され、 通信しているかを監視したり制御したりするするための機能を提供します。 ネットワークに関連する障害をより早くより的確に把握し、その情報を 視覚化して伝える機能により、ネットワークの維持運用の有効性を 効率性を向上させます。

【バックアップ管理】
さまざまなプラットフォームに展開され蓄積されている事業とプロバイダにとって貴重な情報を定期的に バックアップして、必要な時にバックアップしたデータをリストアする機能を提供します。 一般にリストアにはバックアップより多くの時間が費やされるので、迅速で確実な復旧を支援する 機能が求められます。

【ストレージ管理】
ストレージの物理的配置や論理的構成を視覚化することで、ストレージの有効で効率的な 活用を支援する機能を提供します。高度に発達して複雑化しているデータやストレージの 管理を簡単な視覚的操作で実行することができます。

運用管理ツールを導入する側は 特定のアーキテクチャで統合されたツール群を採用することもありますし、適材適所に必要なツールを 配備し、自らが統合して利用する選択肢もあります。

次回は、2010/12/10 の予定です。

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