ITIL には「事業」、「顧客」、「ユーザ」という言葉が頻繁に出てきます。事業側には、 さまざまな立場の人達がいて、その立場の違いからサービスに対する期待も 異なります。そのそれぞれの立場を表現しているのがこの3つの言葉です。
「事業」は、組織の事業目標を達成するためにサービスを利用します。サービスが 事業目標の達成にどの程度貢献したかでサービスを判断します。例えば、 そのサービスによって「売り上げが伸びた」とか、ビジネス・プロセスが簡略化して 「生産性が高まった」とか、「人件費を抑制できた」といった貢献をサービスに 期待します。
「顧客」は、事業目標達成を支援するサービスを調達する責任者です。 事業要件を満たすサービスの機能やレベルを定義し、 費用も含め合意されたサービスの目標値を文書化します。 この合意文書がサービスレベル・アグリーメント (SLA : Service Level Agreement) です。 「顧客」のサービスに対する期待は、プロバイダが合意したサービスレベルを 違反することなくサービスを供給し、事業目標の達成を支援してくれることです。
「ユーザ」は、文字通りサービスの利用者です。「ユーザ」の期待は、サービスが 故障や欠陥なく、何のストレスもなく利用できること、そして困った時に サービスデスクから適切な支援が受けられることです。
同じ事業側に属する「事業」、「顧客」、「ユーザ」でも サービスに対する期待は異なります。場合によっては、 立場の違いで利害が対立することもあります。 例えば、「顧客」はコストを抑えるために低いサービスレベルで妥協しようとしても、 「ユーザ」は使い勝手が悪いためにより高いサービスレベルを求めることも 考えられます。
このようにサービスレベル管理は、事業側の利害関係を理解しながら調整を行い、 サービスレベル・アグリーメントを通してプロバイダの目標を明確にします。 具体的で測定可能な目標を設定することで、プロバイダやそのスタッフが 取り組むべき課題が明確になります。
次回は、2010/05/25 の予定です。