ITIL 徒然草

ビジネス・インパクト分析


ITサービス継続性管理の目的は事業に不可欠な ITサービスの継続的供給を保証することです。 事業にとっては、どのような事態においてもあらゆるサービスが利用できることが 理想ですが、そのためには膨大なコストがかかります。

事業は、どのITサービスにどのくらいの継続性が求められているかを知る 必要があります。また、ITサービスの間で優先順位をつけなければなりません。 それぞれのITサービスに求められる継続性は、そのサービスが利用できない状態 が続くことで、利害関係者がどのくらいの痛手を被るかによって判断することができます

例えば、銀行の自動支払機(ATM)サービスの場合、ほとんど中断できないレベルにまで 継続性が求められるようになりました。 それは、いつでもどこでも利用できるサービスになってしまったために 利用者の期待値が高いことや、利用できないことによる社会へ影響が 大きいからです。また、金銭的、直接的なダメージばかりではなく、 その銀行に対する信用が低下することで、将来の事業機会を失ってしまう という無形の財産に対するダメージもあるからです。

一方、住宅ローンの返済計画を算出するITサービスは、たとえその サービスが利用不能になったとしても、 電卓でおおよその金額を算出するなど別の手段で代替することができれば、 多少不便ではあっても貸出し業務を継続することができるかも知れません。

このように、サービスが利用できなくても有効な代替手段が存在すれば、 事業へのダメージを抑制することができるので、ITサービスを復旧させることが 必ずしも唯一の選択肢ではないのです。

ITサービス継続性管理の活動によって事業継続性管理を 効率的に支援するためには、ITサービスを供給する側の努力 だけでは限界があります。実際にITサービスを利用している 事業側と協力して、それぞれのITサービスが利用できなくなった時の 事業側の対応についてシナリオを描き、時間の経過とともに どのような損害や損失が事業側へもたらされるのかを予測します

このような、サービスの欠落がもたらすであろう事業へのインパクトを 定量化する活動をビジネス・インパクト分析と呼んでいます。

次回は、2010/02/25 の予定です。

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