今回は、ITIL V3 の補完ガイドの1つである"Guide to Software Asset Management" について取り上げてみます。 あえて、タイトルを和訳すると「ソフトウェア資産管理ガイド」となるでしょうか。 この本の最初には、次のようなことが記されています。
ソフトウェアは、情報通信技術における最も重要な要素の1つであり、 ほとんどの組織が莫大な投資を行っている。しかし、 それらのソフトウェア資産を管理する領域には十分な投資が行われていない。
このガイドは、ソフトウェア資産管理(SAM)とは何か、そして、業界のベストプラクティスとして どのようなことが有効で効率的になされるべきかを説明しています。 ちなみにこの本では、SAM を、次のように定義しています。
組織内にあるソフトウェア資産を、 全ライフサイクルを通じて効果的に管理、コントロール、 保護するためのすべてのインフラストラクチャとプロセス
本の構成は、最初にソフトウェア資産管理の全体像を示し、 4章以降は、サービスマネジメントにおける4P(人=組織、プロセス、 製品=技術、パートナ)の観点から、ソフトウェア資産管理を 説明しています。各章とその内容は以下の通りです。
1章 導入(Introduction)
SAM の定義、必要性、原則、メリット、課題、コスト、実装への取り組み方、 推奨事項、ITILとの関係、本の構成などが記されています。
2章 関連事項(Context)
ライセンスや著作権などソフトウェア資産に限られる特徴や、ソフトウェアの製造や供給に 関係する事業者についての説明があります。
3章 ビジネス・ケースの作成(Making the business case)
SAM 導入に対するビジョンや戦略の策定なども含め、ビジネス・ケース を作成する際の手引きが示されています。
4章 組織、役割、責任(Organizartion, roles and responsibilities)
SAM 導入に当たっての重要な意思決定の一つである集中化と分散化のバランスに関する手引きや、 SAM を主導する主な役割と責任、関連する役割と責任が示されています。
5章 プロセス概要(Process overview)
ソフトウェア資産管理で求められる以下の5つのプロセス群と、 それぞれのプロセス群に存在すべきプロセスの説明がなされています。
- 全体管理プロセス群
- 資産管理プロセス群
- 調達関連プロセス群
- 検証と法令順守プロセス群
- 関係管理プロセス群
6章 実装概要(Implementation overview)
SAM 実装を、準備(Preparation)、実施(Getting there)、維持(Staying there)、 確認(Providing you are staying there) という4つのステージに分割し、 それぞれのステージに何を行うべきかを示しています。
7章 ツールと技術(Tools and technology)
SAM プロセスで使用される可能性のあるツール群を、資産目録ツールや 検出ツール(ディスカバリ・ツール)など、10のカテゴリに分類して紹介しています。
8章 パートナとソフトウェア資産管理
(Partners and software asset management)
手引書、コンサルタント、アウトソーサ、監査、認証など、SAM の実装や運用を支援する外部リソースを紹介し、それぞれの特徴を説明しています。
9章 SAM と ITILやその他のアプローチとの関係
(Mapping SAM to ITIL and other approaches)
ITIL、ISO/IEC 20000、ISO/IEC 19770、COBITなど、他のオープン・スタンダードとの関連性について説明しています。 ちなみに、サービスマネジメントには ISO/IEC 20000 という国際規格がありますが、ISO/IEC 19770 は ソフトウェア資産管理に関する国際規格です。
次回は、2011/5/10 の予定です。