ITIL 徒然草

"ITIL V3 Small-Scale Implementation"
小規模な導入


今回は、ITIL V3 の補完ガイドの1つである"ITIL V3 Small-Scale Implementation" について取り上げてみます。この書籍には、中小規模の事業組織(SMBs : Small and Medium-sized Businesses)がITILのフレームワーク に沿ってサービスマネジメントを実践する際の手引きが示されています。

あえて中小規模の事業に絞って出版されたことは、ITILも組織の大きさによって実践方法に工夫が必要であることを物語っています。 組織の大きさによる違いについては、この本の5章で次のようにまとめられています。

中小規模の事業組織は一般的に、 型にはまることがないので(INFORMAL CULTURE)、 情報の伝達が早く(QUICK COMMUNICATION)、機敏(RESPONSIVENESS)で 柔軟(FLEXIBILITY)に行動することができます。 また、事業における自分たちの立場をよく理解しており(UNDERSTANDING THE BUSINESS)、 チームへの貢献精神(TEAM SPIRIT)が高い傾向にあります。

その一方で、個人への依存度が高く(RELIANCE IN INDIVISUALS)、 何かがあった時には隠れるところはありません(NOWHERE TO HIDE)。 1人当たりの複雑性は高く(PER CAPITA COMPELEXITY)、 規模の経済性を追求することができないため、スタッフの教育など組織を維持するためのコストは 相対的に高くなります(HIGH ORGANIZATION COSTS)。 それでも、専門家(LACK OF SPECIALISTS)や専門知識が不足しがち(UNLIMITED KNOWLEDGE)で、 スタッフの将来のキャリア(LIMITED OPPORTUNITIES FOR CAREER GROWTH)も限られてしまいます。

この本には、中小規模の事業組織の特徴を理解した上で、ITIL V3 に記された サービスマネジメントのベストプラクティスをどのように解釈すればよいかの手引きが示されています。 1章にはこの本を出版した意図が示され、2章から4章まではコア書籍の抜粋です。

1章 SMBにおけるITILの活用
2章 ITIL - ITSMのベストプラクティス
3章 ITILのサービス・ライフサイクル
4章 ITILのサービス・ライフサイクル - 中核にある概念

5章にはSMBの特徴がまとめられ、6章から11章まではSMBにおけるサービスマネジメントのベストプラクティスが ITIL V3 が示したサービス・ライフサイクルに沿って具体的に示されています。

5章 SMBの特徴
6章 SMBにおけるITILサービスライフサイクルの適用
7章 SMBのためのサービス戦略
8章 SMBのためのサービス設計
9章 SMBのためのサービス移行
10章 SMBのためのサービス運用
11章 SMBのための継続的サービス改善

12章および13章では、サービスマネジメントの実践における人や組織についての 課題に言及しています。中でも、コア書籍で取り上げられた30~50の役割を、 7つの役割に整理した1つの例は、説得力があり実践的であると感じました。 14章ではSMBが、ツールや自動化の課題に対してどう取り組むべきかの手引きが示されています。

12章 SMBにおけるIT資源の管理
13章 SMBにおけるサービスマネジメントの構築
14章 ツールとアドバイス

残念ながら現時点では、この本の翻訳版は出版されていません。

次回は、2011/5/25 の予定です。

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