今回は、ITIL V3 の補完ガイドの1つである"ITIL Lite" を紹介します。この本には"A road map to full or partial ITIL implementation" (ITIL全体や部分的導入のロードマップ)という副題が付いています。
ITIL V3 は、ライフサイクルの観点でサービスマネジメントを捕え、 良いサービスを提供するために管理の対象範囲を組織全体に拡大しました。 ITIL Liteは、ITIL V3 のフレームワークの中から組織の目的に合ったコンポーネントだけを選択して導入する方法の1つです。
第1章 何故、ITIL Lite か?
私たちは ITIL V3の考え方が必要であるということに注目するあまり、 すべてを導入する必要はないという筋の通った反対意見から目をそらしがちです。 この章では、ITIL V3 の導入を躊躇するさまざまな課題を打開する ITIL Lite の有効性を説明しています。
第2章 シンプルで効果的なITILプロセスの設計
ITIL V3 のサービスマネジメント・フレームワークに基づいて、 ITILのプロセス設計を行うための手引きが示されています。 プロセス設計は、全体の整合性を維持するだけではなく、 実践から学んだ経験を生かしプロジェクトを加速するためにも組織的に実施します。
第3章 ITIL V3コンポーネントのカテゴリ化
ITIL Lite における重要な取り組みの1つは、 ITIL V3 の26のプロセスと4つの機能の中からどのコンポーネントを採用するかを決定することです。 コンポーネントはバランスよく配置されているので、削除する際にはバランスを考慮しなければなりません。
カテゴリ化では、ITIL V3 の各コンポーネントを、 Action(行動する)、Influencing(影響を与える)、Resource(リソースを提供する)、 Underpinning(下支えする)という4つのカテゴリに分類しますが、この分類は絶対的なものではなく、 組織内の議論を通して決定します。 これらの活動を通して、スタッフは各コンポーネントに対する深い理解と共通の認識を持つようになります。
第4章 プロセスのフィルタリング
実際に導入するコンポーネントを選択するための手引きが記されています。 基本コンポーネント(essential)、除外するコンポーネント(rejected)、 将来的に取り入れる可能性があるコンポーネント(potential)に分類し、 関係者からのフィードバックを反映させて組織的な合意を形成します。
第5章 ITIL Lite のテンプレート
選ばれたコンポーネントとそれぞれの関係性を説明するテンプレートを作成します。 テンプレートは独自に作成する方法もありますが、次に示すITIL Lite のテンプレートを 利用することも可能です。
・ 最小限(Bare necessities) のアプローチ
・ 自然進化(Organic growth) のアプローチ
・ サービスサポート・アプローチ
・ サービスデリバリ・アプローチ
・ V2 アプローチ
・ V2 プラス・アプローチ
・ ライフサイクル・アプローチ
・ 継続的サービス改善アプローチ
・ サービスオペレーション・アプローチ
・ サービス・オーナシップ・アプローチ
・ ベストプラクティス・アプローチ
第6章 ITIL Lite 導入に向けた準備
この章には、成熟度を定義して各コンポーネントを評価し目標を設定するまでの8ステップ、 コンポーネントの優先度を設定するまでの7ステップ、 そしてギャップを分析し、行動計画を策定するための手引きが示されています。 さらに、この本に記されているすべての活動が完了したことを前提に、 各コンポーネントの行動計画と全体の行動計画を取りまとめるまでの手引きが示されています。
ただ、それぞれのコンポーネントの導入計画策定や導入に関する手引きが示されている訳ではないので、 各コンポーネントの手引きはITIL V3 の各コア書籍を参照しなければなりません。
第7章 まとめ
ITIL Lite プロジェクトのロードマップを、計画前、計画、実施の3段階に分け、 この本がどの段階で誰に読まれるべきかが示されています。また、 サービスのさらなる改善のため、同様のプロジェクトが継続的に繰り返されるべきであるとも述べられています。
残念ながら現時点ではこの本の翻訳版は存在しませんが、 itSMF Japan が翻訳のレビュアを募集されていたので、間もなく出版されるのではないかと 期待しています。
次回は、2011/6/10 の予定です。