"Information Lifecycle Support"
今回は、ITIL V3 の補完ガイドの1つである "Information Lifecycle Support"(情報ライフサイクル支援)を紹介します。 この本には、"Wisdom, kowledge, information and data management(WKIDM)" (知恵・ナレッジ・情報・データの管理)という副題が付いています。
コア書籍におけるナレッジ管理の説明は、 どちらかと言うとサービストランジションで扱うデータや情報を、 いかにサービスオペレーションに受け渡すかという点に重点が置かれていましたが、 この補完ガイドに記されているWKIDM(知恵・ナレッジ・情報・データの管理)は、 サービスマネジメントの領域に止まらず、企業が扱うすべてのデータや情報を対象としています。
この本の中で、 WKIDMの目的は次のように表現されています。
WKIDMの本質的な目的は、事業における企業のデータ資源を開発することであり、 その資源を、必要な時、必要な場所に、求められる正確さと適切な表現形式で提供することである
つまりWKIDMは、企業が抱える膨大なデータ資源を、 計画して収集し廃棄に至るまでデータベースや文書として組織の管理下に置き、 有効な情報やナレッジとして十分に活用することで利益を得るための活動です。
一般的に、組織はデータや情報の管理に関して次のような課題を抱えています。
- 情報源によって内容に矛盾がある
- 必要な人に情報が伝わらない
- 情報が利用できるまでに時間がかかりすぎる
- 情報の質が低く、信頼できない
- 組織要因で情報にアクセスできない
- 同等の機能を持つ情報システムが複数ある
- マシンの増加や分散により、データの維持管理コストが増えている
WKIDMは特定のシステムに対する単なる技術的な活動ではありません。 経営陣の責任の下で実施される企業レベルの活動です。 データそのものを直接取り扱うのではなく、 メタデータ(組織のデータに関するデータ)をコントロールすることで、 組織のデータやデータ定義のあらゆる利用者に対して、 データに関する問題の解決を支援します。
適度に構造化され、永続的に統合されているデータ資源は、 様々なニーズに容易で素早く対応することができ、 次のような利益をもたらしてくれます。
- 情報資産を監査できる
- セキュリティやプライバシーの規制に準ずる
- 変更に迅速に対応できる
- 長期的なコスト削減に貢献する
- 協同作業を改善する
- 複数組織によるサービス供給を調整する
- データ品質を高める
- 意思決定の権限を委譲できる
- システム開発を迅速でコスト効率的にする
3章ではまた、企業データ・モデル(CDM:Corporate Data model) の設計や管理の重要性について言及しています。つまり、 個別のビジネス・プロセスの視点でアプリケーションのデータを定義していると、 組織は常にデータ変換のためのコストを支払い続けなければなりません。 相互運用性の観点からデータ・モデルを設計することで、 アプリケーション間でデータ定義を共有することができます。
この書籍では他に、ナレッジ管理と情報管理の関係性(4章)、 WKIDM のミッションと達成目標(5章)、課題(6章)、活動(7章)、 役割(8章)などの説明や、WKIDM と開発との統合(9章)、 グリーンITとの関わり(10章)、知恵の定義(11章)についての説明があります。
次回は、2011/7/10の予定です。