ケプラー・トリゴーは、 チャールズ・ケプナー(CharlesKepner)とベンジャミン・トリゴー(BenjaminTregoe) が提唱した問題解決手法です。ナレッジと経験を最大限に活用して、 次の5つのステップで、問題を体系的に分析する方法が有効であるとしました。
・ 問題の定義
・ 問題のの記述
・ 考えられる原因の洗い出し
・ 最も可能性の高い原因のテスト
・ 本当の原因の検証
当たり前と言えば、当たり前のアプローチなのですが、 いざ障害が発生すると、さまざまなプレッシャーによって冷静さを失い、 支離滅裂な対応をしがちです。この体系的なアプローチを落ち着いて実行することが、 結果的に、より早い問題の解決につながるのではないでしょうか。 それでは、それぞれのステップをより詳しく見ていきましょう。
① 問題の定義
調査を実施するために、どのようなインシデントが発生しているかを正確に文書化します。 問題を識別した時点で原因が推測できる場合もありますが、 合理的な裏付けなしに結論に飛躍してしまうことのないように注意します。
(注:この技法ではITILのようにインシデントと問題を分類していません。
「①問題の定義」は、ITILにおけるインシデントの識別と考えられます。)
② 問題の記述
インシデントの特徴、発生場所、発生時間、頻度、規模、影響度など、 問題とそれに起因して発生していると推測されるインシデントに関して、 わかっていることを文書化します。
③ 考えられる原因の洗い出し
類似する環境で正常に機能している箇所を調査します。 インシデントが発生している環境と、 発生していない環境の差異を特定してリストを作成します。 この差異の中に原因が含まれている可能性が最も高く、 効果的に原因を追求することができます。
④ 最も可能性の高い原因のテスト
ステップ③でリストされた根本原因の候補をそれぞれ評価し、 それが調査中のインシデントの根本原因となりうるか否かを判断します。
⑤ 本当の原因の検証
絞り込まれた根本原因が、調査対象となっているインシデントを引き起こすことを検証します。 実際に同じ環境を用意することで検証することができますが、 迅速かつ簡単に検証できる推定原因から取りかかったほうが、 絞り込みを効率的に行えます。
ちなみに、ケプラーとトリゴーはコンサルティング会社を設立し、事業においも成功しました。 世界規模の企業に成長し、日本にも法人会社が設立されています。 問題解決のコンサルティングや教育事業を営んでいますが、 その中核となる問題解決技法、KT法は、 ITILのコア書籍に記されている「ケプラー・トリゴー」とは少し違うようです。
ウィキペディア(Wikipedia)によると、KT法では、 人類の問題解決プロセスの思考、反応、行動のパターンは、次の4つの質問に分類できるとして、 その質問に答える形で問題の解決にあたるというものです。
(1) 状況把握(SA:Situation Appraisal)
現状把握と課題抽出 : 何が起きていて何をすべきか?
(2) 問題分析(PA:Problem Analysis)
問題の明確化と原因究明 : なぜ起きたのか?
(3) 決定分析(DA:Decision Analysis)
目標設定と最適案決定 : どのように対応すべきか?
(4) 潜在的問題分析(PPA:Potential Problem Analysis)
リスク想定と対策計画 : 何が起きそうか?
ITILで紹介されている「ケプラー・トリゴー」の5つのステップは、 KT法の(1)(2)ステップに含まれています。 つまり、ITILでは根本原因の識別までの方法が紹介されており、 KT法では問題をどのように解決して、 将来のためにどう対策するかまでが含まれています。
次回は、2013/10/10の予定です。