ITIL 徒然草

サービス・カタログ(2)


コア書籍の1つである「サービスデザイン」では、サービス・カタログを ビジネス・サービス・カタログ技術サービス・カタログの2種類に分類し、 付録にもビジネス・サービス・カタログの例を示しています。 サービス・カタログを単なるサービスの目録であるとして読み飛ばしてしまいがちですが、 実は様々な可能性を秘めている文書です。

第136話でもお伝えしましたが、 サービスの定義はその捕らえ方によって違ってくるので、 管理の単位や対象を明確にすることは重要です。 サービス・カタログを作成することは組織としてサービスを定義することにもなるので、 サービスの条件や品質を決定する際の適用範囲を明確にすることができます。

サービス・カタログに記載する内容に関して絶対的な基準はありません。 記載する内容を固定的に捕えてしまうとその可能性は限定されてしまいます。 しかし、組織には目的に応じて何種類かのサービス・カタログがあると考えると、 サービスに関わる多くの人達に恩恵をもたらす文書に発展させることができます。

例えば、ITIL V2の「サービスデリバリ」で紹介されていたビジネス・サービス・カタログは、 会社の部門とサービスのマトリックスで、 どの部門がどのサービスを利用しているかを示す一覧表でした。これは、 プロバイダがどの組織にどんなサービスを供給しているかを、 事業側が直感的に理解するには好都合の文書です。

ITIL V3で例として紹介されているビジネス・サービス・カタログは、 ユーザに対してサービスの利用時間やエスカレーション窓口などの情報を提供する文書として利用することができます。 また、サービスレベル・アグリーメント(SLA)へのリンクもあるので、 サービスデスクのスタッフが合意内容を確認するためのエントリ・ポイントとして利用することもできます。

一般の市場を対象としたサービスの場合、 サービス・カタログは潜在的な顧客に対して商品を紹介する文書として作られます。 この種の商品カタログは、我々にとっても最も身近な存在と言えるでしょう。

サービス・カタログはカタログの読者に合わせたサービスのビュー(見え方・見せ方)です。 最初は、表計算ソフトに記された単なるサービスの目録かもしれません。しかし、 サービスの情報を格納するデータベースと、カタログの利用者に異なるビューを提供することができれば、 組織にさらなる価値をもたらしてくれます。

「サービスデザイン」には、次のような一文が記されています。

(サービス・カタログによって正確なサービスの情報を維持するためには、) カタログとポートフォリオはIT組織内の誰もが使用し、 維持を支援する必要がある必須の情報源であることを組織のカルチャが受け入れる必要がある。

次回は、2012/1/10の予定です。

第136話