(Business relationship management)
事業との関係を管理する活動は、バージョン2の「ビジネスの観点」でも取り上げられており、 以前からその存在と必要性は認識されていました。しかし、 サービスマネジメント・フレームワークにおける位置付けが明確ではなく、 これまでのITIL本では詳しく取り上げられることはありませんでした。 ITIL 2011ではその事業関係管理プロセスが、サービスマネジメント・ライフサイクル全体を通して実施されるサービス戦略のプロセスとして、 体系的に説明されています。
事業関係管理の目的は、変化する事業ニーズに応えるサービスが提供できるように、 プロバイダと顧客との関係を確立し維持していくことです。 他のサービスマネジメント・プロセスのほとんどは、 サービス・プロバイダが確実に何かが実施できるようにすることに注目しているのに対して、 事業関係管理は顧客が求めているものが確実に得られることに注目します。
サービスストラテジにおける事業関係管理は、 サービス・プロバイダが顧客の達成目標と要件を正しく理解するための活動を行います。 顧客が要求するサービスをプロバイダが供給できる可能性があれば、 そのニーズに応えるべきか否かの評価をサービス・ポートフォリオ管理に依頼します。 顧客の観点や要件をプロバイダ側に伝えるだけではなく、 事業側に対してプロバイダができることを正確に伝える役割があります。
サービスデザインにおける事業関係管理は、顧客と設計チームの両方に対して 誰と話し合うべきか、また何を話し合うべきかをガイドします。 プロバイダが顧客の詳細な要件を適切に理解することを確実にし、 もしそうでなければ誤りを正します。 また、サービスレベル管理とともに顧客の期待が適切なレベルに設定されることを確実にします。
サービストランジションにおける事業関係管理は、 顧客に影響を与える変更、リリース、そして展開の活動に必ず顧客を関与させ、 彼らのフィードバックが考慮されることを確実にします。 サービスの妥当性確認やテストの際には、 受入れテストに対する顧客からのインプットや妥当なテスト・ データが必要になるでしょう。事業関係管理は、 必要な時にいつでも顧客の協力が得られるよう貴重なコミュニケーション窓口を確保します。 すべての変更や開発を顧客に通知し、 それが適切な場合には、CABミーティングや変更評価のミーティングに、 顧客を代表して参加したり、顧客を参加させるための調整を行います。
サービスオペレーションにおける事業関係管理は、 サービスレベル管理、インシデント管理、サービスデスクと協力し、 SLAや契約を満たすサービスが供給されることを確実にします。 それぞれのプロセスと機能は顧客満足度を測定し、事業関係管理に報告します。 顧客満足に関するすべての課題は、事業関係管理が直接顧客に伝え、 他のサービスマネジメント・プロセスと協力して適切な解決策を明示します。
継続的サービス改善における事業関係管理は、 サービスの報告を監視し、定期的に顧客満足度、サービスレベル違反、 顧客からの要求や不満に関する最新情報を関係者に伝えます。 他のプロセスや機能と協力して改善処置を特定したり、 その処置について顧客から合意を得たりする活動を支援します。
次回は、2011/10/10の予定です。