(Design Coordination)
このプロセスの英名はDesign Coordinationという単語で説明されており、 直訳すれば「設計コーディネーション」とか「設計調整」といった表現になります。ただ、 設計活動全体を調整してまとめ上げるというプロセスの目的を表現するために、 itSMF Japan の公式表現がリリースされるまでは設計統括プロセスと訳して紹介します。
設計統括プロセスは、サービス設計の結果に最終的に責任を持つプロセスです。 サービス設計の最も重要な出力はサービスデザイン・パッケージ(SDP) と呼ばれるサービス提供に関する設計書や計画書など設計活動で作成される文書一式です。 しかし、2007版のITIL V3の中では、それらの成果物に対する責任の所在について、 サービス設計マネージャという表現はあったものの、 プロセスの観点からの踏み込んだ説明はありませんでした。
全体の取りまとめという意味ではサービスレベル管理プロセスがその役割を担うことになりますが、 サービスレベル管理は本来、顧客との調整やサービス改善サイクルの実現という重要な役割がありますから、 サービス設計の全体を取りまとめる活動とは少し違います。一般的には、 システムを開発するプロジェクトの中で実施されている活動です。また、 プロジェクト・チームを発足させない小規模な変更においては、 変更管理でサービス変更を技術的に評価をすることがサービス設計の最終的な調整活動と言えます。
アプリケーション開発など固有の課題を解決するプロジェクトの活動は、 ITILの適用範囲外ということであまり触れられることはありませんでしたが、 設計を取りまとめる活動にはどのプロジェクトにも適用できる普遍的なプラクティスがあり、 サービスマネジメントの1つのパーツとして組み込むべきであるという結論に至ったのではないかと思います。
設計統括プロセスには、大きく分類すると2種類の活動があります。 1つは、サービス設計全体に関する活動であり、もう1つは、個々のサービス設計に関する活動です。
全体的活動は、どのプロジェクトや変更においても適切なサービス設計活動がなされるためのコーディネートであり、 設計統括プロセスのプロセス・マネージャによって実施されます。 ITIL 2011には次の5つの活動が説明されています。
- 方針と手法の定義と維持
- 設計リソースと能力の計画
- 設計活動のコーディネート
- 設計に関するリスクと課題の管理
- サービス設計の改善
個別の活動は、 それぞれのサービスに対して、すべての要件が設計に反映されることを確実にする活動で、 次の4つが挙げられています。
- 設計の計画立案
- 設計の調整
- 設計の監視
- 設計レビューとSDPの受渡し
次回は、2011/10/25の予定です。