(Strategy management for IT Services)
サービス戦略をテーマにする際に混乱していた1つの原因は、テーマとしているサービス戦略 がそれぞれのサービスに対する戦略なのか、それともサービスを供給するプロバイダの戦略なのかが曖昧だった点です。 ITIL 2011では、この点を明確にしました。サービスストラテジの P136 に次のように記されています。
ITサービス戦略管理は、サービスプロバイダの戦略を管理することを意味しています。 (中略)個々のサービスに対する戦略は、サービス・ポートフォリオ管理の中で定義され、 サービス・ポートフォリオ内に文書化されます。
サービスストラテジのITサービス戦略管理は、 ITIL 2007におけるサービスストラテジのプロセスの内容を整理したもので、 大きく分けると以下の4つの活動で構成されています。
・ 戦略的アセスメント
・ ITサービス戦略の作成、評価、選択
・ ITサービス戦略の実施
・ ITサービス戦略に対する測定と評価
戦略的アセスメントは、 サービス・プロバイダ自身の強みや弱みと外部環境における機会と脅威を分析し、 組織が目指すべき目標を設定する活動です。 戦略的アセスメントの結果に基づいて、プロバイダはターゲットとする市場を定義すると同時に、 その市場での成功や失敗につながる要因を特定します。
ITサービス戦略の作成、評価、選択では、 サービス戦略を作成して文書化します。 サービス戦略の4つのP、すなわち、 プロバイダの観点(Perspective)を明確にし、ポジション(Position)を設定し、 計画(Plan)を立案して、サービス供給の際の行動パターン(Pattern)を作ります。
ITサービス戦略の実施では、戦術的なサービス戦略の計画を立案して組織に伝達します。 すべてのサービスマネジメント・プロセスは、 サービス戦略を支持するためにどのサービスがどのように管理されるべきかを決定し実践します。
顧客の事業目標達成をより推進するためにサービス資産の割当てを調整したり、 重要成功要因を満たすためにスキルやツール、あるいは経営層からの支持など、環境の最適化を図ったりします。 サービスへの投資に関して顧客のニーズに応じた優先付けを行うのもサービス戦略実施の1つです。
ITサービス戦略に対する測定と評価は、さまざまな立場から行われます。 「顧客やユーザ」は事業目標が達成されたか否かによってサービス戦略の評価を行います。 「サービスマネジメント・プロセス」はサービス戦略が有効であったかどうかで判断します。 「継続的サービス改善」は、サービスやサービスマネジメントの予測値と実績のギャップを測定します。
「経営陣」には、サービス戦略に関連した組織のパフォーマンスを知る仕組みが必要です。 期待する効果が得られていない領域が存在するとか、より投資が必要であるなど、 測定結果を評価することでサービス戦略を調整することができます。
いったん市場との関係が築かれるとサービス戦略に関する意思決定はより容易になります。 既存のサービス資産や顧客を「てこ」にしてサービスを拡大させたり、利益を高める手法は、 成功する成長戦略としてしばしば用いられます。
次回は、2011/9/25の予定です。