バージョン2では、主にプロセスの観点からサービスマネジメントを説明していましたが、 バージョン3では、組織・機能・役割という観点からの説明もかなり増えました。
サービスストラテジでは、組織の発展レベルをネットワーク、指示、 委任、調整、協働の5段階に分類して説明しています。
段階1:ネットワーク
この段階の組織は確立した手順よりも迅速なサービス供給を重視します。 階層型の職務権限によってではなく、合意によって行動が調整される集団です。 組織が成長するに従って、効率的なリソースの割り当てが不可欠となり、 リーダは組織を管理する次の段階に移行する必要に迫られます。
段階2:指示
この段階の組織は階層構造を形成し、機能が定義され責任者が割り当てられます。 コミュニケーションのルールが規定され、基本的なプロセスも整備されます。職務権限と リーダシップによって組織は運営されるようになりますが、下位スタッフの自主性が 尊重されなければ、モチベーションを低下させる要因となります。組織は下位スタッフに 権限を移譲することで業務の有効性や効率性を保つ必要が出てきます。
段階3:委任
下位レベルのマネージャに権限が移譲され、組織はコスト削減やサービスの改善に 自主的に取り組みます。より多くの責任がラインの長である機能のオーナからプロセスの オーナに移譲されます。プロセス指向のアプローチの始まりです。部下をコントロールする 権限を失ったと感じる機能のオーナは、プロセスのオーナと対立する可能性があります。
段階4:調整
より強力な調整を行う公式な仕組みが確立され、機能とプロセスが調整されるように なります。プロセス指向のアプローチが組織の文化として定着したことを意味します。 ITILの導入はプロセス指向の文化を移植することと考えることができます。 この段階のおける課題は調整のスピードです。調整に時間がかかり、ビジネス・ニーズ の変化に機敏に対応できない場合があります。
段階5:協働
調整スピードに関する課題を克服した組織です。組織はチームワークと対立解消に 長(た)けており、柔軟性があります。組織は事業状況の変化や戦略の変更に対して、 必要な機能を組み合わせたチームを編成し対応します。マトリックス型の組織も 一つの典型です。
組織はある期間、ある段階にとどまりますが、サービスの要件が発展するに伴って次の 段階に移行します。いったん次の段階へ移行すると、前の段階に戻って成功する ことは難しくなります。組織は前進しなければなりません。