バージョン2で ITサービス財務管理(Financial Management for IT Service) と 呼ばれていたこのプロセスは、バージョン3において単に財務管理と 呼ばれるようになりました。
記されている内容の多くはサービスデリバリで述べられていたことですが、新たに 需要管理やサービス・ポートフォリオ管理など 他の関連プロセスとの関係が示され、企業に優れた意思決定をもたらす重要なプロセス として強調されるようになりました。
「経済とは、倹約ではなく、賢く使うことである」
トーマス・ヘンリー・ハクスリー(Thomas Henry Huxey)
これは、サービスストラテジの第5章「サービスの経済学」の冒頭に記されている 格言です。財務管理は、とかく「サービス供給コストの削減」が目的と みなされるプロセスですが、本来、投資効果の最大化を図るための 活動です。
従来、サービス供給にかかるコストは、勘定科目によって分類され管理されてきました。 しかし、サービスマネジメントの観点に立ち、サービス供給コストの効率性を高めるためには、 サービス指向の財務管理が必要です。
例えば、ユーザ支援を行っているサービスデスクのスタッフの人件費を考えてみます。 スタッフのユーザ支援業務の相手先やサービス名が記録されていれば、 スタッフの人件費を顧客毎、サービス毎に配賦することができます。
仮に一部のサービスのサービスデスクへの負荷が極端に高い場合、 重荷となっているサービスのサービスデスクへのコストを関係者に伝え、 そのサービスに対するサービス要求に制限を加えたり、価格を調整すること でコストを回収したりすることが可能になります。
ITに対する投資効果を高めるために最も必要とされていることは、 サービス供給コストを視覚化することです。財務管理は、企業全体から サービスに関する財務情報を収集し、次に示す重要な意思決定や活動の ために情報を加工して供給します。
財務管理で説明されているこれらの新たな概念については、 次回以降に取り上げようと思います。