ITIL V3 では、「バリュー・チェーンからバリュー・ネットワークへの移行」という ビジョンがあります。それは、サプライヤとの関係を 状況に応じて動的に調整し、顧客により高い価値を生み出す能力を サービスマネジメントに求めています。
サービス提供モデルでは、プロバイダが選択しうるサプライヤとの関係を示していますが、 (日本の)市場にまだ十分に定着していない概念に関しては、選択肢に関するそれぞれの説明が短いので 具体的なイメージを持つにはかなりの想像力を要します。
コソーシングとマルチソーシングは、一般的にはアウトソーシングの一種とみなすことができます。 アウトソーシングも、ガバナンスが失われると返ってコストがかかったり、十分な価値を生み出す ことができません。この2つのサービス提供モデルは、外部組織の力を利用しながら、 いかにしてガバナンスを確保するかのアプローチです。
コソーシングは、外部組織に業務を丸投げするのではなく、内部組織と共同でサービスを 提供するアプローチです。外部組織の専門的な知識やスキルをいち早く取り入れ、市場に より早くサービスの価値を提供するというアウトソーシングの利点を生かしながら、 共同でサービスを提供することで知識やスキルが蓄積され、外部組織に対する コントロールを維持することができます。
マルチソーシングは、「サービスデザイン」にはパートナーシップとも 表現され、説明されています。しかし、その記述内容だけでは他のサービス提供モデル との違いを具体的にイメージするのは困難です。
インターネットなど他の情報ソースの力を借りながら整理すると、今までのアウトソーシングとの 最大の相違点は意思決定の順番です。まず、「誰が」アウトソースするかではなく、 「なぜ」アウトソースするかを明確にします。
マルチソーシングでは、外部委託する「理由」を明確化し、外部組織の価値を見極め、 企業戦略に則して社内と社外の業務を切り分けます。 複数の外部組織の長所を効果的に組み合わせることで、新たな市場を開拓することも可能になります。
マルチソーシングにおいて、組織内外のリソースは等価な選択肢です。社内外のリソースを 最大限に活用し、変化への対応が難しいといわれるアウトソーシングの弱点を補います。
コソーシングは共同でサービスを 供給することでガバナンスを確保しますが、マルチソーシングは外部委託する理由を明確にして、 きめ細かく業務を委託することでガバナンスを確保します。
次回は、2009/6/25 の予定です。