ITIL 徒然草

ITIL V3 の特徴【コア書籍コンテンツの構成】


ITIL V2 の出版は、プロジェクトを開始した1998年を起点にすると、2006年に 「ビジネスの観点2」がリリースされるまで約8年間かかりました。 これには、「ビジネスの観点1」が2004年にリリースされてから「ビジネスの観点2」がリリースされるまでに 約2年間が費やされたという事情もありますが、最後の書籍を除いたとしても約6年の歳月が必要でした。

ITIL V3 の特徴として特筆されるべきことは、2005年末のプロジェクト発足からわずか2年足らずで、 1冊250頁前後の書籍を計5冊同時にリリースしたことです。 最後の数か月間は、サービスマネジメントの領域に関わる世界中の専門家から、フィードバックを 募って反映させることに費やされており、そのことを考慮すれば実質1年間で著わされたことになります。

ITIL V2 から内容の多くを引き継いだという経緯は確かにありますが、広範囲に渡るサービスマネジメントの ベストプラクティスをサービスライフサイクルの観点から体系的に整理し直すだけではなく、次世代でも 通用するサービスマネジメントの新たなアプローチを提唱するという活動の成果からすれば、驚くべき スピードであったと言えます。

これには、ITIL V2 が長い時間をかけて出版されてきたために、整合性を保つことが困難であったという反省も あるようです。わずかな例外はありますが、ITIL V3 のコア書籍5冊の章立ては見事に統一されています。

ITIL V3 のコア書籍5冊の各章には、次のような内容が書き記されています。

1章 序章
5冊のコア書籍の紹介と当該書籍が著わされた目的やその内容の概要が紹介されています。

2章 概要
サービスマネジメントに関する基本概念の説明と当該ライフサイクルの概要が示されています。

3章 原則
当該ライフサイクルにおける基本概念や、活動の際に拠り所となる重要な原則やモデルが説明 されています。

4章 プロセス
当該ライフサイクルにおける主要なプロセスの目的、最終目標、達成目標、基本概念、 活動などの説明がなされています。

5章 関連活動
当該ライフサイクルにおいて、考慮すべき重要な他のプロセス、活動、手法、技法、 基本概念などが説明されています。

6章 組織
当該ライフサイクルで求められる役割や責任を示し、そのライフサイクルを組織化の観点から説明しています。

7章 技術
当該ライフサイクルにおける活動を技術やツールがどのように支援するかについて説明しています。

8章 導入
当該ライフサイクルにサービスマネジメントを導入する際の考慮事項が示されています。

9章 課題・重要成功要因・リスク
当該ライフサイクルにサービスマネジメントを導入する際に克服すべき課題、 重要成功要因、リスクが示されています。

コア書籍5冊の章立てを表にまとめると次のようになります。特に、5冊のコア書籍をサービスマネジメントを 実践するための参考書として何度も読み返すような読者にとって使いやすい構成になっています。

書籍名サービス
ストラテジ
サービス
デザイン
サービス
トランジション
サービス
オペレーション
継続的
サービス改善
1章
導入
序章序章序章序章序章
2章
概要
プラクティス
としてのサービス
マネジメント
プラクティス
としてのサービス
マネジメント
プラクティス
としてのサービス
マネジメント
プラクティス
としてのサービス
マネジメント
プラクティス
としてのサービス
マネジメント
3章
原則
サービス戦略
の原則
サービス
デザイン
の原則
サービス
トランジション
の原則
サービス
オペレーション
の原則
継続的
サービス改善
の原則
4章
プロセス
サービス戦略サービス
デザイン・
プロセス
サービス
トランジション・
プロセス
サービス
オペレーション・
プロセス
継続的
サービス改善
プロセス
5章
関連
活動
サービスの
経済学
サービス
デザイン
の技術関連
活動
サービス
トランジション
で実施する
一般的な活動
一般的な
サービス
オペレーション
活動
継続的
サービス改善
の手法と技法
6章
組織
戦略と組織サービス
デザイン
のための組織化
サービス
トランジション
のための組織化
サービス
オペレーション
のための組織化
継続的
サービス改善
のための組織化
7章
技術
技術と戦略
(8章)
技術に関する
考慮事項
技術に関する
考慮事項
技術に関する
考慮事項
技術に関する
考慮事項
8章
導入
戦略、戦術、
運用
(7章)
サービス
デザイン
の導入
サービス
トランジション
の導入
サービス
オペレーション
の導入
継続的
サービス改善
の導入
9章
考慮
事項
課題、
重要成功要因、
リスク
課題、
重要成功要因、
リスク
課題、
重要成功要因、
リスク
課題、
重要成功要因、
リスク
課題、
重要成功要因、
リスク

次回は、2009/4/25 の予定です。

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