ITIL 徒然草

既知のエラー


ITIL V2 において曖昧さを含んでいたいくつかの概念が、 ITIL V3 ではより明解に説明されています。問題管理の章で説明されていた 既知のエラーもまた曖昧さの多い概念でした。そのために、様々な誤解が 生まれていたように思います。

誤った認識を持たれがちな、いくつかの例を取り上げてみたいと思います。

・ 「問題」と「既知のエラー」の関係
・ 既知のエラー・レコードの内容
・ 既知のエラー・レコードの提起
・ 問題レコード/既知のエラー・レコードの作成者

「問題」と「既知のエラー」の関係

「問題」の根本原因が発見され、ワークアラウンドが識別された時に、「既知のエラー」 というステータスが割り当てられます。従って、「既知のエラー」になっても「問題」がクローズ される訳ではありません。「既知のエラー」になってもインシデントは 発生します。「既知のエラー」になった「問題」は、インシデントの再発防止やインパクト 低減のために、引き続き問題管理によってコントロールされます。

既知のエラー・レコードの内容

既知のエラー・レコードに記載されるのは、ワークアラウンドや根本原因だけではありません。 既知のエラー・レコードには、発生した障害の症状や判明した事実の詳細が記載されます。 また、ワークアラウンドとして、サービス回復のために取られた手順や、インシデントの発生を 迂回して目的を達成する回避策などが記載されます。 実装については、問題レコードが既知のエラー・レコードを兼ねる方法もあれば、 FAQ のような実現方法も考えられます。

既知のエラー・レコードの提起

問題の根本原因とワークアラウンドが判明したときに、問題は既知のエラーと 呼ばれるようになります。しかし、問題が「既知のエラー」になる前に、既知のエラー・ レコードが提起されることもあります。記される情報がインシデント管理にとって有用であると 判断された時点で、既知のエラー・レコードは提起すべきです。ややこしい話ですが、 既知のエラー・レコードを持つ「既知のエラー」ではない問題が存在することなります。

問題レコード/既知のエラー・レコードの作成者

同じ問題に対する別の問題レコード/既知のエラー・レコードが作成されることを 避けるために、問題マネージャだけが新しいレコードを作成できるようにするなど、 レコードの重複を避ける工夫が必要です。これは、 既知のエラー・レコードを提起できる人を制限するということではありません。 「提起する人」はあらゆる領域に渡りますが、「作成する人」は 問題管理の限られた関係者であるべきです。

次回は、2009/8/25 の予定です。

第79話 第81話

速習! ITSM


目次

サービスの可用性

(2009/9/10)

問題コントロール

(2009/8/25)

既知のエラー

(2009/8/10)

管理とコントロール

(2009/7/25)

アプリケーション・サービス供給

(2009/7/10)

BPOとKPO

(2009/6/25)

コソーシングと
マルチソーシング

(2009/6/10)

サービス提供モデル

(2009/5/25)

資格試験の出題範囲

(2009/5/10)

V3 で表現が変わった概念

(2009/4/25)

コア書籍コンテンツの構成

(2009/4/10)

戦略的サービスマネジメント

(2009/3/25)

サービスマネジメントの構造

(2009/3/10)

ITIL V3のコンセプト

(2009/2/25)

ITIL V3の特徴

(2009/2/10)

サービス・パッケージ

(2009/1/25)

サービス・モデル

(2009/1/10)

サービス・プロバイダ・タイプ

(2008/12/25)

プロセス成熟度フレームワーク

(2008/12/10)

IT運営委員会(IT戦略委員会)

(2008/11/25)

組織の発展

(2008/11/10)

戦略の4つのP

(2008/10/25)

会計

(2008/10/10)

コスト構造の可視化

(2008/9/25)

財務上の計画立案

(2008/9/10)

財務管理

(2008/8/25)

需要管理2

(2008/8/10)

サービス・ポートフォリオ管理

(2008/7/25)

ビジネス・ケース

(2008/7/10)

サービス・ポートフォリオ

(2008/6/25)

需要管理

(2008/6/10)

サプライヤ管理

(2008/5/25)

サービス・カタログ管理

(2008/5/10)

サービスナレッジ管理システム

(2008/4/25)

ナレッジ管理

(2008/4/10)

評価

(2008/3/25)

サービスの妥当性確認とテスト

(2008/3/10)

移行の計画立案と支援

(2008/2/25)

サービス移行

(2008/2/10)

アクセス管理

(2008/1/25)

イベント管理

(2008/1/10)


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