ITIL 徒然草

エスカレーション


エスカレーションという言葉は、 異常事態に際してより多くの権限を有する者に解決を委ねる行為と という意味で日常的に使われています。しかしエスカレーションには、 段階的に拡大していくといった意味も含まれています。

インシデントの解決を 最初からより専門的、あるいはより権限を有するスタッフに委ねれば、より早く 解決策を見出すことができますが、それらの人材はより希少であるためコストが 高くつきます。組織として効率的にインシデントを解決するためには、徐々に専門性や 権限を有するスタッフに解決を委ねる必要があるのです。これがエスカレーションです。

サービスサポートの業務の中でエスカレーションを考えてみると、大きく分けて2つの戦略があります。 一つはより専門的なスタッフに解決を委ねること。もう一つはより権限を有するスタッフ に解決を委ねることです。これらのエスカレーションをそれぞれ、機能的エスカレーション階層的エスカレーションと呼んでいます。

機能的エスカレーションはより専門性を有するスタッフに解決を委ねる行動です。難度の高い問題は、 通常2次サポート、3次サポートという呼び名でより専門性を有するスタッフに 引き継がれます。段階的により専門性の高いリソースを 投入しているこの行為を、ITILでは機能的エスカレーションと呼んでいます。

一方、階層的エスカレーションは、定められた手順では目標とする時間内にインシデントを解決できない時、 より権限を有するスタッフに解決を委ねることです。我々が通常、エスカ レーションと呼んでいるこの行動を、ITILでは階層的エスカレーションと表現し、 機能的エスカレーションと分けて扱っているわけです。

インシデント管理は、この2つのタイプのエスカレーションをどのように利用すれば、 より早く、より少ないコストでインシデントを解決できるかを調査、分析、検討し、 エスカレーションのルールを決め、インシデント処理の最適化を目指します。

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