ITIL 徒然草

ビジネスの観点 パート2


今回ご紹介するサービス提供におけるビジネスからの視点は、2006年秋に出版 されました。前回紹介したパート1ではサービスを供給する側の課題が中心でしたが、 この本には、ITサービスを購入し利用する立場の人々に対する専門家からのメッセージが まとめられています。

第2章 企業戦略とITでは、ITは企業戦略の一部をなしていることを説明しています。そして ITに関わる何らかの意思決定が必要な時には、その位置づけや重要性を理解するために 最高情報責任者(CIO)などITサービスマネジメントの上級職を意思決定プロセスに参加させるべき であると主張しています。

第3章 ITガバナンスでは、 MIT と、COBITという 2つの代表的なITガバナンスの考え方を紹介 しています。 一般にITガバナンスは、組織の構造、ビジネスとITの管理方法、そして業績監視に 目を向けることで、ビジネスの成功に貢献するものであると考えられています。

企業戦略変更の管理ビジネスとサービスの継続性IT資産の管理外部委託ナレッジマネジメントなど、この本の別の章で取り上げられている話題は、 すべてITガバナンスの重要なテーマです。

この本の中では、MITCOBITなどのベストプラクティスはITガバナンスの改善に有効 であると断った上で、 ビジネス目標に注目し、ITがその目標にどのように貢献できるかを認識することが重要であると 結論づけています。

第4章 変更の管理で対象にしているのは、ITも含めたビジネス・プロセスの変更です。 変更が企業戦略によるものであれ、運用レベルの微細な変更であれ、そのリスクは把握され管理され なければなりません。企業統治の面からも、「知らなかった」では済まされなくなってきているのです。

この章では、変更を管理することの重要性、変更を管理するためのITILのフレームワーク (変更管理、構成管理、リリース管理)、そして変更を成功させるための重要成功要因などが 取り上げられています。

第5章 ビジネスとサービスの継続には、継続することが何故重要で、誰が、どのように 実現するかがまとめられています。

第6章 IT資産管理ではIT資産を管理することの重要性を、コスト・コントロール、 ビジネスニーズに沿ったIT投資、法令順守、さらにリスク軽減の面から説明しています。

第7章 ITサービスの外部委託では、外部へ業務を委託することによる利点とリスクが 示され、委託する際に考慮すべき事項を具体的に説明しています。

第8章 ナレッジマネジメントでは、組織のエクゼクティブが何故ナレッジマネジメント に注意を払う必要があるかを訴えています。それは、情報の共有がビジネスの成功に直結している からです。

溢れる情報を価値ある知識に変えることができるか否かはトップの姿勢に依存します。 もし情報を持っていることで権力を誇示すれば、その姿勢がそのまま組織に浸透し、 セクショナリズムと情報の停滞を引き起こします。トップが繊細な情報以外はすべて オープンにする姿勢を見せなければ、情報は孤立しその価値が高まることはありません。

第9章 標準とベストプラクティスでは、組織にとっての重要性と選択方法に ついて説明しています。

標準やベストプラクティスは業務の品質を 高めるために参照される、実績に基づいてまとめられた基準や経験則です。 組織が意味を理解して利用すれば、ITガバナンスの質を高めることができます。 もし、サプライ・チェーン全体で同じ基準採用すれば、さらなるサービス供給コストの 削減を期待することができます。

標準やベストプラクティスの選択は慎重になされるべきであり、 選択の際に行うべきことと考慮点が示されています。

【注】本書の日本語訳版はありません。

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