ITIL 徒然草

最終目標


ITILには目標という言葉がよく出てきます。目標には2つのタイプがあり、 一つは最終目標(Goal)、そしてもう一つが達成目標(Objective)です。

最終目標という言葉は特にプロセスに対して使われ、ITILが定義する すべてのプロセスには、その最終目標(Process Goal)が示されています。

例えば、インシデント管理の最終目標は次のように定義されています。

可能な限り迅速に通常のサービス運用を回復することであり、 ビジネスへの悪影響を最小限に抑え、提供可能な最高のサービスレベルに 品質と可用性を維持すること(サービスサポート  P71)

運用業務を改善するためにプロセスの変更を検討する場合、どのように変更 するべきか判断に迷うことがあります。そんな時、この最終目標をよりどころ にすることで、ぶれの少ない改善活動を続けていくことができます。

インデント管理であれば、インシデントの分類、優先度の判断基準、 エスカレーションの仕組みを決める際に、どのようなルールであれば、 最も効率的に通常のサービス運用を回復することができるかを検討すればよいわけです。

しかしながら、プロセス間において利害関係が発生する場合があります。 例えば、リリース管理が定義するリリースまでのハードルが高いために、 変更に時間がかかるとします。稼働環境が安定することで リリース管理の最終目標は達成されますが、変更管理の最終目標の一つである迅速な 変更は達成されず、ビジネスのニーズをサービスに反映しにくくなります。

このような問題を解決するために、プロセス間の調整が必要になってきます。
IT組織は何が顧客を満足させるサービス供給の仕組みなのか を考えなければなりません。 こんなとき参照すべき指針は次に示すサービスレベル管理の最終目標なのです。

事業やコストの正当性を踏まえ、ITサービスの成果に対する一定の周期での 合意、監視、報告、および低品質なサービスを取り除く活動の開始を通して ITサービスの品質を維持し向上させること(サービスデリバリ  P27)

誤解を恐れず分かりやすい表現にすれば、ITサービスマネジメントの判断基準は 以下の2点に集約されます。

  • 何が有効で効率的なやり方なのか
  • 何が継続的に顧客の期待に応えていけるやり方なのか


  • 上記に問いに正しい判断がなされていれば、人、プロセス、 技術はより質の高いサービスを提供すべく、最適化が図られていくのです。

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