ITILでは運用業務をプロセスの集合として捕らえ、ITサービスをそれらの プロセスの成果物として評価します。評価した結果をフィードバックすることで 運用業務は改善され、提供するサービスの品質は向上するのです。
このプロセス指向のアプローチには、大きな利点がありました。 それは組織に依存しない普遍的なベストプラクティスを提供するということです。 小さな企業では、先進的な技術やツールを導入したり、十分なスタッフを確保したり することが現実的な選択肢にはなり得ない場合があります。規模や組織上の制約から 超越しているプロセスという概念を利用することで、どんな組織にも適用できる 運用改善の考え方を示したのです。
ITILが定義したプロセスは、多かれ少なかれほとんどの組織に存在します。 ですから、「当たり前のことを書いているに過ぎないのではないか」という感想を 持つ人もいます。たとえITILが指摘している活動を既に実践していた としても、それでITILの価値が失われる訳ではありません。実践しているプロセスの質と、 その成果物であるサービスの品質をどのように改善していくかについて、 多くのを示唆を与えてくれるでしょう。
一方、「具体的に何をすれば良いのか分からない」といった指摘を聞くこともあります。 ITILのベストプラクティスは、特定の技術や具体的な手順の詳細ではありません。 自分達の組織に適したソリューションは、自分達でしか見出すことはできないのです。
具体的なソリューションではないにもかかわらず、ITILの主張は世界中に広まりました。 プロセス指向のアプローチを採用し、技術や手順の詳細に深く踏み込まなかったことが、 ベストプラクティスに普遍性を与え、幅広く普及するための障壁を取り除いたのです。
今回はITILの普及が妨げられなかった理由について話してきましたが、第4話では、企業が ITILを導入する積極的な理由についてお話したいと思います。