企業がITILを導入する積極的な理由、それはITILがITをコントロールする手段を企業に提供してくれるからです。
ITサービスの利用者である企業は、供給されるサービスの品質に関してIT組織と合意を 結び、その合意に基づいてITをコントロールするというのが、ITILの 考え方です。ITILを世に送り出したCCTA(Central Computer and Telecommunications Agency) がサービスレベル管理に関する書籍を出版した1989年には、SLAを締結することなど、 契約社会のヨーロッパでさえほとんどなかったそうです。ところが、15年の歳月を経て日本 でもようやくSLAの考え方が普及し始めました。
たった数日で世界を駆け巡る最近のコンピュータ・ウィルスと比較して、15年という歳月は長過ぎるかもしれません。でも、それだけ長い時間をかけて評価され、ゆっくりと、しかし着実に普及してきたのです。
「サービスレベルに関して契約を結ぶなんて日本の商習慣に馴染まない」
「SLAを結んだら、賠償金が心配だ」
「SLAなんて、IT組織を責める口実を増やすだけだ」
といったお考えを持たれている方も多いのではないかと思います。ここには、発想の転換が必要です。IT組織がたえずプレッシャーを受けるのは、サービスの内容を評価する拠りどころがないからなのです。
サービスが中断すれば、深夜でも休日でもできるだけ早い復旧を求めます。IT組織はそれらのリスクをカバーできるように、高額なサービス料金を設定します。もし請求することができな ければ、サポート・コストを減らし、結果としてサービスの品質が低下します。 封建時代のような主従関係。問答無用のサポート依頼。これらが安くて質の高いサービスの提供を阻害しているのです。
企業はIT組織と対等なパートナーシップの関係を築いてください。そうすれば、SLAを 使って、ビジネスの視点でITをコントロールできます。これが、ITILの主張なのです。