ITILバージョン3の中核をなす書籍群の中には、どのようにしてサービスの価値を創造し、市場に投入するかを議論しているサービス戦略というタイトルの本があります。バージョン2の普及は、サービスサポートとサービスデリバリという2冊の本が中心でしたので、ITILは運用業務のベストプラクティスという認識が定着しています。
サービス戦略の出版に唐突な感じを受ける方もいらっしゃるかと思いますが、バージョン2のアプリケーション管理に出てくるアプリケーション・ポートフォリオなどの概念の中にサービス戦略の萌芽が見受けられます。
存在しているサービスをいかに管理するかがバージョン2のテーマでしたが、バージョン3ではさらにその前の段階にまで踏み込んでいます。サービスを定義し、供給の枠組みを整備するフェーズに焦点を当てたサービス戦略は、バージョン2との違いを際立たせている書籍です。
サービス戦略の活動の一つに戦略的資産の開発があります。これは、サービスを供給するためのサービス資産を準備することです。 サービス資産はリソースと能力で成り立っています。
組織は能力を使って、リソースをサービスの価値に変えます。
代表的なリソースには、次のものがあります。
サービスマネジメントのためのツールもまた一つのリソースです。財務資産は投資やコストという形でサービス価値の源泉になります。 リソースは、能力に比べると比較的簡単に手に入れることができます。
また、人材にはリソースの側面と能力の側面があります。
代表的な能力には次のものがあります。
能力の開発には時間がかかります。優れた能力は、長い時間をかけて洗練されるものです。能力開発に不可欠な幅と深みのある経験は、成功や失敗を繰り返し、多様な顧客と関わりを持つことで蓄積することができます。