問題管理を成功させるためには、そのためのリソースが必要である と述べましたが、実はもう一つ欠かすことのできないものがあります。 それは、問題を管理する文化です。
「見える運用(Visible Ops)」では、優れた組織にはいくつかの 文化的共通点があると主張していますが、その1つがこの 問題を管理する文化、すなわち 因果関係を重視する文化(A culture of causality)です。
企業活動に関する様々な不祥事がマスコミに取り上げられますが、多くの場合、 問題に対する関心の低さがその背景にあります。事故というのは突然起きることは ほとんどなく、その兆候を見逃しているケースが圧倒的に多いのです。
当初は小さなインシデントとして注目されていた事象も、慣れてしまうと何も 感じなくなります。日常的に発生するインシデントから 目をそらしているうちに、取り返しのつかない大事故が発生するのです。
企業活動に悪影響を及ぼす事象でも、そこに問題があることが認識されな ければ、決してその事象を排除することはありません。問題管理を 成功させるということは、問題に目を向ける文化を育てていくことでも あるのです。
インシデントへの対応に追われていれば、問題に目を向けるどころか、 問題を意図的に隠してしまうかもしれません。 問題を管理する文化を育む土壌が用意されていないのです。
また、経営陣から十分なリソースと時間が与えられようとも、 問題を管理する意識が欠如していては、その兆候を見つけることはできません。
スタッフの一人一人が、より良いソリューションでインシデントや 問題を解決しようとすること。また、問題やエラーを検出してインシデントを予防する 意識を持つこと。このような問題を管理する文化を浸透させていくことこそが、 最良の問題管理ではないかと思います。