ITIL 徒然草

問題を管理する文化


問題管理を成功させるためには、そのためのリソースが必要である と述べましたが、実はもう一つ欠かすことのできないものがあります。 それは、問題を管理する文化です。

「見える運用(Visible Ops)」では、優れた組織にはいくつかの 文化的共通点があると主張していますが、その1つがこの 問題を管理する文化、すなわち 因果関係を重視する文化(A culture of causality)です。

企業活動に関する様々な不祥事がマスコミに取り上げられますが、多くの場合、 問題に対する関心の低さがその背景にあります。事故というのは突然起きることは ほとんどなく、その兆候を見逃しているケースが圧倒的に多いのです。

当初は小さなインシデントとして注目されていた事象も、慣れてしまうと何も 感じなくなります。日常的に発生するインシデントから 目をそらしているうちに、取り返しのつかない大事故が発生するのです。

企業活動に悪影響を及ぼす事象でも、そこに問題があることが認識されな ければ、決してその事象を排除することはありません。問題管理を 成功させるということは、問題に目を向ける文化を育てていくことでも あるのです。

インシデントへの対応に追われていれば、問題に目を向けるどころか、 問題を意図的に隠してしまうかもしれません。 問題を管理する文化を育む土壌が用意されていないのです。

また、経営陣から十分なリソースと時間が与えられようとも、 問題を管理する意識が欠如していては、その兆候を見つけることはできません。

スタッフの一人一人が、より良いソリューションでインシデントや 問題を解決しようとすること。また、問題やエラーを検出してインシデントを予防する 意識を持つこと。このような問題を管理する文化を浸透させていくことこそが、 最良の問題管理ではないかと思います。

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